ハリケーン「サンディ」で空前の被害を受けたニューヨークのブルームバーグ市長は2日夕、今月4日に実施する予定だった恒例のニューヨークシティー・マラソンを中止すると発表した。

 同市長は、ニューヨークで40人以上が死亡し、中心部での停電や地下鉄不通が続いているにもかかわらず、いったんは実施を決定。「救援活動を阻害する」と批判が高まったが、2日午後の記者会見でも「回復ぶりを示す」と突っ張った。だが約4時間後、決定撤回に追い込まれた。

 同マラソンは一流ランナーを含め約4万人の参加が見込まれる世界最大規模の都市マラソン。関連収益は推定約3億4000万ドル(約270億円)。今年は日本からロンドン五輪陸上の女子長距離代表の福士加代子ら著名選手のほか、多くの市民ランナーも出場する予定だった。市長は中止の理由について「対立や分裂の元になってしまった」と声明で述べた。

 スタート地点とされたスタテン島では2歳と4歳の幼児を含む約20人が犠牲に。「家族や家をなくした人々を助けるとき。延期を」と訴える同島区長や「近くで遺体や生存者を捜索しているのに」と怒る住民の声が2日、繰り返し伝えられた。

 2日付の大衆紙ニューヨーク・ポストは、ゴールのセントラルパークそばに用意された発電機は「電気も暖房もない被災者のために使うべきだ」と主張。デーリー・ニューズ紙も、ランナーの多くが豊かな人々だと指摘する批判的な記事を載せていた。

 参加予定だった人々は地元テレビに「もっと早く(交通費やホテル代など)お金を使う前に言ってほしかった」「がっかりしたけど理解できる」「また1年間、練習するだけ。観光に切り替える」などと話していた。