マイペース川内を守れ-。8月の世界選手権(韓国・大邱=テグ)出場を決めた市民ランナーの川内優輝(23=埼玉陸協)に対し、日本陸連が「環境保護」に乗り出す。2月27日の東京マラソンで日本人トップの3位に入り、待遇は一変。賞金200万円に副賞の高級車BMW523i(600万円相当)をゲット。S、A、B、Cの4段階ある強化選手指定のBに認定され、年額150万円の強化費も与えられる方向だ。しかし、日本陸連が危惧するのは、世間の目だ。

 これまで福岡国際など多くのレースに参加したが、注目度は低かった。今回の東京も自然体で臨んでの結果。それだけに長距離・ロード対策委員会の河野副委員長は「一番怖いのが環境の変化であり、認知度の変化。注目されることで、いいところが失われてしまわないか。コーチもいない。差し出がましいことはできないが、できる限りフォローしたい」と言う。

 世界切符から一夜明け、川内は出場プランの見直しにも迫られた。8月に世界選手権を走ることで、来年の五輪が視野に入ってきた。当初は10月大阪を予定したが「(五輪の)選考が入ってくるので、どうしましょう」。12月の福岡国際など五輪選考レースに集中する考えを示唆する。

 高まる期待と注目度。公園や野山の静かな環境で、マイペースに才能を開花させた天然素材に、環境保護という課題が浮き上がった。【佐藤隆志】