日本政府が尖閣諸島を国有化した11日、中国・上海市で毎年開催されている東レ上海マラソンの発表会見が同市内で行われたが、開始からわずか4分で突然中止となった。会見が始まったのは尖閣諸島国有化を閣議決定した直後で、反発した中国政府が、会見中止を要請したとみられる。日本企業協賛という理由で、約2万人参加のマラソン大会が取りやめになる恐れが出てきた。

 会見は午前10時(日本時間同11時)過ぎから始まった。主催の上海体育総会や特別協賛の東レの幹部らが紹介され、上海マラソンのPRビデオを上映した。その上映の間に、同総会幹部の携帯電話に、上海市上層部から会見中止の要請があったという。司会者は「各種の理由のため、会見をこれで終了します。この件を報道しないでほしい」と一方的に宣言した。会見中止の細かい説明はなかったが、同総会幹部は、日本政府の尖閣諸島国有化決定の影響を示唆したという。

 同マラソンは今年で17回目。この日の会見では、12月2日開催や、競技種目、制限時間、コースなどの詳細を発表する予定だった。今年からユニクロも協賛企業に加わり、この会見に続いて開催予定だった東レとユニクロの合同記者会見も中止された。東レ広報は「会見が中止されたという一報だけ。詳細は分からない」と困惑気味。ユニクロ広報も「何も説明を受けていない。今後どうなるかという情報もない」と話した。

 中国国営新華社はこの日午前、日本政府の尖閣諸島国有化を速報で伝えた。会見中止は、中国政府の強い反発を受けた措置とみられる。関係者によると、大会が中止されるかどうかは未定。日中関係が今後さらに悪化すれば、世界各国から約2万人のランナーを集める名物イベントが中止される可能性もある。公式ホームページで参加者を募集していたが、現在は閲覧できない状態になっている。

 上海マラソンは96年に始まり、東レは翌97年の第2回大会から特別協賛として参加している。中国で積極的に事業展開をしており、社会貢献活動の一環としてマラソン協賛を始めた。06年大会には野口みずきや弘山晴美が出場するなど、日本人の有力選手も多数参加。中国国内の4大国際マラソンの1つに数えられている。