男子マラソンの公務員ランナー川内優輝(25=埼玉県庁)が、思い出の地で初心に帰る。今夏のモスクワ世界陸上代表選考会を兼ねた別府大分毎日マラソン(大分市高崎山・うみたまご前~大分市営陸上競技場)は今日3日正午、号砲が鳴る。マラソン人生をスタートさせた大会で川内は、チャレンジ精神を強調。レースを翌日に控えた記者会見で「醜いレースはしたくない」と語った。

 ほおをなでる海風が心地よかった。この日朝、川内は大分港周辺を走った。09年2月に初マラソンを刻んだ思い出の地。無名ランナーとして宿泊したビジネスホテルも視界に入った。「ゴール直後もピンピンしてて係の人に『マラソンって面白いですね』って」。今の倒れ込んでゴールする自分を自虐するように笑った。

 ガムシャラに勝つ。その意識を、今回は封印する。「初マラソンを走った所ですし、今回は初心に帰ってチャレンジャーに戻って、中本さんや佐藤さんに挑戦したい」。ロンドン五輪6位の中本と、07年世界陸上13位の佐藤を追う。昨年は約30のレースに招待されて出場。「勝たなければ、のレースばかり。今回はロンドン6位の偉大な中本さんや佐藤さんら、今まで勝ったことのない選手とのレースは久々。楽しんで肩の力を抜いて走りたい」。

 当初は、21回目のマラソンとなる今大会で2時間7分台の好タイムを出せば、その後の選考会回避を示唆していた。それも「2時間10分を1年以上切っていない。切れれば3月のびわ湖(毎日マラソン)で頑張れる」と軌道修正する。

 勝負とタイム、どちらを重視するかは「レース次第で切り替えます」と二刀流も宣言。とはいえ、いざスタートすれば川内のこと。体が勝手に反応することを期待せずにはいられない。昨今の選考会でありがちな日本人1位争い。外国人が飛び出しても自重するシーンに「日本人同士の、醜いレースはしたくない。何してるんだこの人たちはって思いました」と過去の別大を振り返り、勝負どころは踏み込むつもりだ。

 「初優勝してガッツポーズでゴールしたい」と言った“偉大な”中本の発言にも「ポーズを取ることで1秒ロスするよりも1秒でも早く駆け抜けたい」と持論を展開。どこではじけるか分からない、21回目の川内劇場から目が離せない。【渡辺佳彦】