<陸上:ベルリン・マラソン>◇29日◇ベルリン

 また、高速コースで世界新記録が飛び出した。昨年のロンドン五輪銅メダリストのウィルソン・キプサング(31=ケニア)が2時間3分23秒で優勝。2年前に同マラソンでパトリック・マカウ(28=ケニア)がマークした世界記録2時間3分38秒を15秒更新した。2時間4分5秒の好記録でエリウド・キプチョゲ(29)が2位に入るなど、5位までをケニア勢が独占。女子優勝もケニアのフローレンス・キプラガト(26)だった。

 2位に大差をつけてゴールのブランデンブルク門をくぐり抜けたキプサングは「最高だよ。勝てて、記録も破れたからね」と胸を張った。次々とゴールするケニア勢。その頂点に立ったベテランは「10年前、ここでケニアの英雄テルガトが世界記録を出した。それを見て、自分もと思った。同じコースで記録を出せて、人生最大の夢がかなった」と、興奮気味に話した。

 過去15年で男子6回、女子も01年の高橋尚子ら2回世界新が記録されている高速コース。高低差のない市街地を走るレースは、序盤から世界記録を期待させるハイペースだった。最初の5キロが14分33秒。ペースメーカーのスピードに、早くも第1集団がケニア勢7人、エチオピア勢2人の9人だけに絞られた。

 中間点を1時間1分34秒で抜けたが、30キロでペースメーカーが離れると、スピードが鈍った。35キロの通過タイム1時間42秒36は、2年前に世界記録を樹立したマカウに20秒遅れた。「ペースが遅すぎて、強い気持ちで攻めないと記録更新は無理だと思った」とキプサング。一気のスパートで、2位キプチョゲを突き放すと、ゴールまで突っ走った。

 2年前ベルリンでマカウが世界新を出した1カ月後、フランクフルトで快走したが4秒届かなかった。昨年のロンドン五輪では中間点で大きくリードしながら後半失速して銅メダルに終わった。これまで、あと1歩で逃してきた栄光。キプサングは世界新ボーナス5万ユーロなど合計12万ユーロ(約1560万円)の賞金も獲得して、富と栄誉を一気に手に入れた。【渡辺修】