【上海(中国)25日=阿部健吾】新たなライバル物語の始まりか-。フィギュアスケートの世界選手権が25日に上海で開幕し、明日27日に男子ショートプログラム(SP)が控えるソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)らが調整を行った。昨年末に腹部を手術し、1月末には右足首の捻挫。万全でない状況で挑む日本人初の2連覇へ、勢いに乗るソチ五輪銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)が立ちはだかる。

 前日24日のことだった。羽生は自分のことを見るテンに気付いた。若き王者へのライバル意識か、視線をビシビシと感じた。2月の4大陸選手権では世界歴代3位で今季最高点となる289・46点の演技を見せた21歳。世界一に駆け上がろうとする意欲満々だった。

 この日の公式練習では羽生の関係者がテンの練習を“偵察”する姿もあった。その目前でバランスの良さを生かした安定感抜群のジャンプ、ステップを決めていった。練習後に羽生のことを聞かれ「意識はしていない」と話したが、腹部の手術をしたことは把握していた。テンの祖先は韓国の将軍で、18年平昌五輪での金メダルには並々ならぬ思いがある。10年バンクーバー五輪金メダルの金妍児と同じ韓国のマネジメント会社と契約を結ぶなど、準備も着々と進めている。

 羽生も練習では4回転ジャンプを7本中5本成功させるなど、調子は上向き。取材対応はなかったが、笑顔も見られた。世界選手権3連覇のチャンや、日本の先輩らライバルの存在を刺激に飛躍してきた若き五輪王者。新たな強敵にどう対峙(たいじ)するか。