ソチ五輪金メダルの羽生結弦(21=ANA)が、史上5人目となる4連覇を達成した。ショートプログラム(SP)首位で迎えたフリーは2度転倒して183・73点にとどまったが、危なげなく世界選手権(3月、ボストン)切符を手にした。

 羽生は苦しんだ末に4連覇を果たした。前日のSPで転倒した最初の4回転サルコー、続く4回転トーループは満点の加点がつく美しい出来だった。だが、演技後半の4回転トーループと3回転半で転倒し、その後もミスが続いた。息絶え絶えに滑り終わると、顔をしかめた。

 フリー200点超えで世界最高得点を塗り替えた最近2戦とは一転「明らかに悪い演技だった。下手くそだと思った」と悔しがった。常に完璧な演技を求めるだけに「メラメラです。煮えたぎってます。次、頑張ります」と早くもリベンジの機会を待ち望んだ。

 11月末のNHK杯、続くGPファイナルと連戦して迎えた今大会。「言いたくない」と話していたが、地元仙台で過ごした直前は、体を休めつつの調整だった。3戦連続パーフェクトの演技はいくら羽生でも難しかった。オーサー・コーチは「世界の他の選手も、彼も人間と気付くだろう。感情的になるシーズンが続き、疲れていたと思う」とかばった。

 この日はアクシデントも重なった。昼間の練習中に村上大と衝突。スピードには乗っていなかったため、大事には至らなかったが1年前のつらい出来事を思い出させた。昨年のGP中国杯ではフリー演技直前の6分間練習で、閻涵(エン・カン=中国)と大激突し、顔から出血するケガを負いながら直後のフリーを滑りきった。この日の衝突について「周りを気にしながらのいい練習ができていたが、自分がぶつかってしまったのは反省している」と振り返った。影響は認めず、「悪夢」を振り払って臨んだフリーだった。

 大みそかにはNHK紅白歌合戦の審査員を務め、来年頭には、岩手・盛岡市での震災復興のアイスショーが待つ。世界選手権に向け、ゆっくりと体を休めたいところだが「課題がたくさん見つかって練習できるのは、うれしい。明日にでも練習したい」と話した。この悔しさが、再びの大記録の糧になる。【高場泉穂】