スピードスケート女子500メートルで、小平奈緒(30=相沢病院)が、自身の国内最高記録を0秒31更新する37秒39の大会新記録で優勝し、20日の1000メートルに続き、2冠を達成した。同組の五輪2連覇中の李相花(27=韓国)に0秒31差をつけて今季6連勝。今季500メートルは国内外の11レースで全勝と圧倒的な強さを見せている。女子1500メートルは高木美帆(22)が前日の3000メートルに続いて優勝するなど、スピードスケートは日本勢がこの日の4種目を全て制した。

 定位置は譲らない。五輪連覇中の李と同組の500メートル。小平はスタートに失敗し、最初の100メートルでスタートが得意なライバルに100分の8秒先行を許す。昨季までなら致命的なミスだが、今季出場レース全勝の30歳に動揺はない。

 「コーナーの加速で挽回できる自信があった」と最終カーブで逆転し、0秒31差で振り切った。自身の国内(リンク)最高を0秒31更新する大会新の37秒39に「国内で37秒前半はなかった。1つ壁をぶち破ることができた」。連戦の疲労もあり「体の状態は80%」の状態で圧倒的な強さを証明した。

 今季500メートルは国内外の出場11レースで全勝。李には6連勝。無敵だが、本人は「相手に勝つことより、自分のレース内容を重視。順位は意識しない」と素っ気ない。「次に目指すものが頭にある。常に前向きなのでプレッシャーはない」と、すべては平昌五輪への通過点にすぎない。

 レースを見守った長野五輪男子500メートル金メダリストの清水宏保氏は「余裕がある。たたずまいから女王の雰囲気が出ている」と驚くように言った。技術面の進化にも注目し「バランスが変わった。低姿勢を持続し、カーブでも安定している」と証言。例えたのが自動車。フロントエンジンの車から、運転席の後ろにエンジンのあるF1カーに変わったような感じだという。「メダルは確実の位置。何色かは来季次第」と、日本女子初の五輪金メダルを期待した。

 休む間もなく今日22日には、世界スプリント選手権(25、26日)の開催地カナダ・カルガリーに移動する。500メートル、1000メートルを2度ずつ滑って争うが、ライバルの李は欠場するため、日本女子初の総合優勝が有力視される。高速リンクで狙うは日本女子初の36秒台。「どんな数字が見られるかを意識して、自分のスケートをしたい」。敵は己の中にしかいない。【田口潤】