昨年9月に韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとして略式起訴され、帰国後に無実を訴えた競泳の冨田尚弥選手(25)の初公判が12日、仁川地裁で行われた。冨田選手は罪状認否で「カメラを窃取した事実はありません」と準備した文書を読み上げ、無罪を主張した。

 冨田選手は、カメラに関する興味や知識がなく、検察が主張するように本体をレンズから取り外して持ち去るのは不可能と主張。「日本代表として出場し、窃盗行為のような愚かなことは行うはずがない」と述べた。

 検察側は、犯行現場を捉えた防犯カメラの映像を証拠提出する意向を示した。

 冨田選手は公判に先立ち、窃盗事件の現場である仁川の文鶴水泳場を訪れ、弁護士と共に当時の状況を確認した。

 起訴内容によると、冨田選手はアジア大会開催中の昨年9月25日、チームの応援で訪れた文鶴水泳場の記者席でカメラを盗んだとされる。同選手は事情聴取で容疑を認め、略式起訴されて罰金100万ウォン(約11万円)を納付したが、帰国後の11月に記者会見し犯行を否定。見知らぬ人物にバッグを奪われ、カメラを入れられたと主張し正式裁判を申し立てた。

 事件を捜査した警察は、防犯カメラの映像に冨田選手の犯行が鮮明に写っているとしていた。

 日本オリンピック委員会(JOC)も職員が映像を確認したとしているが、JOCに送った質問状の回答を受け取った弁護士は「JOCは(警察が言うような)彼がやったという決定的なシーンを見たわけではない」との見解を示している。