<陸上:全日本実業団対抗女子駅伝>◇14日◇岐阜・長良川競技場発着(6区間42・195キロ)◇27チーム

 三井住友海上の渋井陽子(29)が、8年ぶりの区間賞を獲得した。2位と9秒差のトップでタスキを受け、10年連続で務める3区(10キロ)で31分41秒と快走し、チームは準優勝に終わったが、エースの仕事を果たした。レース後、来年1月25日の大阪国際女子マラソン出場を表明。11月の東京で失速し、来年3月の名古屋を希望していたが、前倒しし、来年8月の世界選手権(ベルリン)代表入りに再挑戦する。

 10キロを走り終えた渋井は、タスキを渡すと後続との時間差を確かめた。2位と約1分差をつけた。ケニア人選手が7人もひしめくエース区間で、堂々の区間賞を奪い取った。「今日は一生記憶に残る走りをしてやろうと思った。もっといいところを見せたかったけど、トップで渡せたので良かったです」。

 今大会を最後に、入社以来、世話になった土佐がチームを離れる。前日の開会式後、土佐と雑談していた渋井は「本当に終わりなんだと思うと…」と寂しくなって涙を流した。アンカーで逆転され、優勝で最後を飾れなかったが、エースとしてチームを引っ張る走りで、先輩を送り出した。

 個人としての戦いは、まだ続く。東京国際女子マラソンは、35キロすぎに失速し、09年世界選手権(ベルリン)の代表権を逃した。レース後、名古屋挑戦を口にしたが、1月の大阪出場に切り替えた。渡辺監督らに直訴し、トップ選手では異例となる中2カ月での連戦が決まった。

 「1回、休んでからの方がいいかなと思ったけど、走れる体だった。体ができているうちに、走っておきたかった。気合が入りすぎるとよくないので、力を入れすぎずに勝負したい」と渋井。東京でのテーマは「イケイケ・ドンドン」として積極策を取ったが、今回は「冷静に気負わず」を念頭に走るという。

 指導する鈴木総監督は「疲れもないし、本人の気持ちを大事にした方がいい。気持ちで走る選手だから」と再挑戦をバックアップする。日本人トップなら代表に内定する。初マラソンの赤羽、脇田らがライバルになる。年末から中国・昆明での高地合宿で、最後の調整に臨む。「勝つまで走る」と決めている渋井は、駅伝での快走を励みに、何度でもスタートラインに立つ。【佐々木一郎】