女子マラソンの前日本記録保持者・渋井陽子(29=三井住友海上)が、25日の大阪国際女子マラソンで09年世界選手権(ベルリン)の代表権に挑戦する。24日、大阪城公園で最終調整し、状態が上向いたことを確信。4位に終わった昨年11月の東京国際女子マラソンとは、レース展開、心構え、練習法だけでなく、直前には髪の色も変えた。終盤の失速が続いた最近の結果もチェンジする。

 渋井が変わった。小雪が舞う大阪城公園での最終調整。1000メートルを、2分56秒で走りきった。「あれ?

 速すぎる~」。スピードの出るマラソンシューズをホテルの部屋に忘れ、アップシューズで走ったが、体が勝手に動いていた。

 ここ数日で、状態が一気に上向いた。1週間前、中国・昆明合宿から帰国した時は「いつもならバンバン走れるのに、今回は疲れの中で、必死に走っていた。全日本(実業団女子駅伝)の後、ちょっと疲れが出ました」と落ち込んでいたが、レース前日に表情まで明るくなった。

 展開も変える。持ち前のスピードを生かして飛び出すも、終盤に失速-。昨年11月の東京だけでなく、最近3戦は同じようなレースが続いている。23日の会見では「状況を見て行こうかなと思います」と話した通り、勢いのままの先行策はもう取らない。

 気持ちも変わった。「東京の時は、前のめりだったけど、今回は違う」と渋井。大阪入り後、慎重な言い回しが続いているが、鈴木総監督は「東京の反省があって、落ち着いていこうということだと思う」と心境の変化を感じ取っていた。

 髪も変えた。帰国後、短くカットし、ラッキーカラーの赤をうっすらと入れた。鈴木総監督は年始から、口ひげを伸ばし始めた。初マラソン世界最高(当時)をマークした01年の大阪以来になる。昆明では、起伏のあるコースを用いるなど、練習も変えた。

 レース前の1週間で調子が急上昇するのは、昨年6月の日本選手権とまったく同じ。あの時は、ラストスパートを制し、1万メートルでの北京五輪代表切符を勝ち取った。試行錯誤して迎えるスタートは、午後0時10分。「勝つまで走る」と決めた心に、揺るぎはない。【佐々木一郎】