“寺田2世”がベールを脱ぐ。高校スポーツの祭典、全国高校総体(近畿まほろば総体)は28日、奈良市鴻ノ池陸上競技場で行われた総合開会式で開幕した。29日から陸上など8競技がスタートする。北海道勢注目株は、1年生ながら100メートル障害に初出場する中原元子(恵庭北)。昨年全国中学4位の実力者が、ベルリン世界選手権代表で高校総体3連覇の寺田明日香(19=北海道ハイテクAC)を育てた中村宏之監督(64)のもとで進化した。期待の新星が、自身初の13秒台を出しての決勝進出を狙う。

 中原が無欲の走りで先輩の大記録を目指す。「まずは13秒台を出しての決勝進出が第1の目標。決勝に残ったら自分の走りに集中したい」。あえてタイトルは明言しなかったが「全国の速い先輩たちと走ればタイムも伸びると思う。優勝の可能性は0%ではない」と3連覇した寺田以来の1年生王座も視野に入れた。

 自己ベスト14秒18は、エントリー66人中13位だが、本番での爆発次第では何が起こるか分からない。寺田の1年時も、持ちタイム14秒41で高校総体に臨み、準決勝で14秒23と大会期間中に0秒18縮めた経緯がある。指導する北海道ハイテクACの中村監督も「ここはステップ。寺田のようにはいかないかもしれないが、決勝には残したい」と期待する。

 小1から4年間、新体操で培った柔軟性が武器だ。小5で初めてハードル飛んだときも「意識せず楽にまたげた」というほど股(こ)関節が柔らかい。中村監督も「ぎりぎりでロスのない跳び方ができる」と言う。高校から100メートル障害を始めた寺田が天性の速さを生かして飛ぶのに対し、中原は華麗にハードルを越える“走る妖精”的な良さがある。

 20日の北海道選手権以降は課題である走りの速度を上げるため、脱ハードルトレを敢行。27日の現地入りまで、走り9に対しハードル1の割合まで練習メニューを変えるなど、走行フォーム修正を主体にした調整に時間を費やした。

 13日の南部記念では寺田の2レーン隣で走り、衝撃を受けた。日本記録に0秒05に迫る13秒05をマークした走りに「跳ぶのと走るのが同じぐらいの速さだった」と言う。ともに練習をこなす“アネゴ”の爆走シーンを目に焼き付けた15歳が、全国への1歩を歩み出す。【永野高輔】