<フィギュアスケート:世界選手権>◇5日目◇27日◇イタリア・トリノ、パラベラ競技場◇女子フリーほか

 【トリノ=広重竜太郎】浅田真央(19=中京大)がバンクーバー五輪の雪辱を果たして、2年ぶり2度目の世界女王の座に就いた。ショートプログラム(SP)2位から臨んだフリーで、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が回転不足となるミスもあったが、その後は華麗な演技を披露し、129・50点をマーク。合計197・58点で五輪女王の金妍児(19=韓国)を2位に退け、通算100回目の記念大会で優勝した。日本女子として2度目の優勝は単独最多。

 浅田の表情は充実感でいっぱいだった。2回目の3回転半が回転不足と判定された。それでも、後半の演技は、スタミナが切れてジャンプでミスを連発した五輪時とは違った。「最後のステップはここ一番の出来だった」。129・50点の採点に晴れやかな表情とはいかなかったが、合計197・58点で逆転優勝。「男子と女子両方で(優勝を)取れてすごくうれしい。高橋選手が取って、私も取りたかった」と優勝インタビューでは笑顔をみせた。

 表彰台で宿命のライバル金を2位の座に従えて頂点に立った。10度目の直接対決で5大会ぶりに勝ち、4勝6敗とした。引退の可能性もある金に対し、五輪直後は「自分も(ソチ五輪で金に)勝ちたいという思いがある。もし引退しても記録は残るので塗り替えたい」と話していた。

 だが今大会は打倒金が原動力ではなかった。五輪後はモチベーションも上がらなかった。「五輪で一区切りして力が抜けた」。それでも再び意欲をみなぎらすことができたのは「SPとフリー両方を完ぺきに演じたい」という、選手としての純粋な向上心だった。

 そして五輪でも失敗し、苦戦してきたロシア人作曲家ラフマニノフの「鐘」を見事に演じ切った。重厚すぎる音楽に「曲調が暗い」という意見が絶えず、「007」で大衆受けする金と格好の比較材料となることもあった。不調だったシーズン途中にタラソワ・コーチから曲の変更を提案されたこともあったが、浅田は首を縦には振らなかった。「鐘で最後にいい演技で終われた」。1シーズン戦ってきた思い入れのある曲で、世界女王に返り咲いた。

 ただし、今回は五輪の雪辱とは切り離した。「五輪の悔しさは、この試合では晴らせない」。浅田は五輪金メダルの夢をいつまでも見続ける。