<陸上国際グランプリ大阪大会>◇8日◇大阪・長居陸上競技場

 五輪2大会連続でメダルを獲得した男子ハンマー投げの室伏広治(35=ミズノ)が復活への手応えをつかんだ。11カ月ぶりの公式戦となった大会で77メートル86で3位につけた。昨年後半は腰や股(こ)関節の痛みで、世界選手権も欠場するなど長期欠場。まだ試運転段階の中で記録は平凡だが、本人も納得の成績を挙げた。集大成となる12年ロンドン五輪に向け、再出発した。

 最後の6投目を投げ終え、室伏は首をかしげながらも笑顔だった。この日最高の77メートル86は自身が持つ日本記録に7メートル及ばない自己82番目の記録。それでも室伏には光が見えていた。「試合に慣れていない中で、3、4投目で力が出せたらいいと思っていた。3投目(77メートル54)は自分の考えていた通りの形。内容はすごくいい」。11カ月ぶりの公式戦は納得の内容だった。

 09年1月末に腰を痛め、股関節痛も発症した。6月の日本選手権は強行出場したが、ワースト3番目の記録で世界選手権も欠場した。苦闘を知る父重信コーチは復帰戦を「ハンマー自体は回転が生きていない。でも腰を痛めないように努力しながらの試合だから」と見守った。

 室伏は純粋に、戦いの場に浸った。最終投で逆転優勝したナザロフ(タジキスタン)の姿に「タジキスタンは(過去に)内戦があった厳しいところ。その中で頑張る姿を見ると応援したくなる」と感銘を受けたこの感動が12年ロンドン五輪への活力にもなる。「僕が一番やりたいのはドーピングなしで金メダル。それが僕の夢」。過去2回の五輪はドーピング違反者発覚による繰り上げのメダル獲得だった。大観衆の前で首から金メダルを提げる夢を、2年後にかなえるつもりだ。【広重竜太郎】