<体操:全日本選手権兼ロンドン五輪代表第2次選考会>◇初日◇7日◇東京・国立代々木競技場

 大人の色気で五輪をゲットだ。体操界のヒロイン、田中理恵(24=日体大研究員)が、個人総合で56・200点をマークして首位発進した。妖艶なピンクパンサーを演じる新曲の床運動で、トップの13・800点をたたき出し、他の3種目も安定した演技を見せた。男子でも理恵の兄和仁(26)が1位、弟佑典(22)が2位となり、田中3きょうだいが幸先のいいスタートを切った。

 理恵の笑顔がはじけた。最後の種目の平均台で、着地が決まると、自信にあふれたように胸を張った。3種目を終わって美濃部ゆうに次ぐ2位だったが、最後の平均台で逆転した。信念でもある美しい体操を披露し「明日につなげられる演技ができた。大きなミスもなかった」と理恵スマイルが全開だ。

 新曲の床運動では大人の色気を振りまいた。なめ回すような視線に加え、これまでよりも激しい動きを入れ、まさに怪盗ピンクパンサーそのもの。「目力、表現力、強さを見てもらえるように演技した」。審判もノックアウトした大人の色気で、13・800点は全体のトップだ。

 これまで床運動は点が上がらずに苦しんだ。昨年10月の世界選手権団体決勝では、演技した日本女子3人の中で最低の13・400点。この冬は、徹底的に新しい曲に取り組んだ。「観客の人に、もう1度見たいと思ってもらえたらうれしい」。磨いた表現力で世界選手権よりも0・400点もスコアアップだ。

 3月に日体大大学院を修了した。1月は練習時間をやりくりして修論を書き上げた。指導教授はその頑張りに「頭が下がる思いだった」と褒めた。練習環境が変わらないのと、ゆくゆくはコーチになることを見据え、大学院修了後も日体大に残る決心をした。

 今年の元日には和歌山の実家のそばにある日前(ひのくま)神宮で、兄、弟と恒例の初詣に行った。この日、兄と弟は男子でワンツーフィニッシュ。田中3きょうだいそろい踏みの1日となり「きょうだいが頑張っているから、ここまで頑張れる」。理恵は年齢的にも最初で最後の五輪へのチャンス。3きょうだいでの五輪はロンドン五輪でだけ成立する。【吉松忠弘】