<体操:NHK杯兼ロンドン五輪代表最終選考会>◇最終日◇男女個人総合決勝◇5日◇東京・代々木第1体育館

 理恵、和仁、佑典の田中3きょうだいが、日本体操史上初めて、同時五輪代表を決めた。女子個人総合で田中理恵(24=日体大研究員)が2位の美濃部ゆう(22)に7・500点の大差をつけ、トップで初の五輪代表を決めた。五輪2次予選の全日本選手権から4日間、首位を譲らない圧勝だった。理恵に引っ張られるように、兄の和仁(26)も男子個人総合首位で代表に決定。最後に弟の佑典(22)が特化種目の鉄棒で代表入りした。五輪では96年アトランタ大会に出場した柔道の中村3兄弟に次ぐ2組目の快挙。

 理恵が泣き、そして笑った。男子の代表発表。最後に佑典の名前が呼ばれると、思わず両手を突き上げた。2年前、自分から言い出した「3人そろって五輪に行こう」。その夢がかなった瞬間だった。「本当にヤバい!

 すごすぎて分からない」。笑顔だけがはじけた。

 女子個人総合で先に代表を決めた。男子個人総合は所属する日体大の席で、見守った。兄弟の演技が終わるたびに両手で顔を覆った。最終種目の床運動でミスを続出させた佑典には「反省してもらわないと」と、姉貴目線で苦言を呈した。

 理恵自身は圧倒的な強さで、兄弟を引っ張った。4月の全日本は2位に3・650点差をつけて首位。その差を今大会2日間でさらに広げた。結局、計4度の個人総合ですべて1位。「このプレッシャーの中、4日間、ミスなくできたことがうれしい」。表彰台では、珍しく涙を見せた。

 昨年の世界選手権団体決勝では、床運動でミスを出して、日本を予選5位から7位と順位を下げる一因となった。その後、床運動の曲を変えて練習でも本番を想定しての基本練習を繰り返した。「練習はうそをつかない」。その言葉を支えに、ミスの少ない演技を徹底的に磨いた。

 昨年の世界選手権後、関係者からのアドバイスで「未来日記」もつけ始めた。手帳にはこの日の出来事も、すでに「代表決定」と書き込まれていた。ロンドン五輪の女子団体決勝の7月31日にも、すでに「いい演技ができた」と書き込まれている。

 3きょうだいで五輪に行ける最初で最後のチャンスだった。すでに「オリンピックを目指すのはこれが最後」と決めている。「向こう(ロンドン)に立ってからが3人の勝負です」。未来日記の手帳の色は、ロンドンで3人が目指す「ゴールド」に彩られている。【吉松忠弘】

 ▼田中理恵(たなか・りえ)1987年(昭62)6月11日、和歌山市生まれ。6歳で体操を始め、和歌山北高から日体大。今年3月に同大大学院を修了。09年全日本選手権で個人総合2位。10年に世界選手権初出場し、団体総合5位、個人総合で「エレガンス賞」受賞。10年アジア大会個人総合銅メダル。今年の全日本で初優勝。156センチ、46キロ。

 ▼田中和仁(たなか・かずひと)1985年(昭60)5月16日、和歌山市生まれ。6歳で体操を始め、和歌山北高-日大-徳洲会。07年ユニバーシアード団体金メダル。09年全日本、NHK杯個人総合2位で世界選手権初出場し、平行棒で銅メダル。10年の世界選手権は団体総合銀メダル。166センチ、56キロ。

 ▼田中佑典(たなか・ゆうすけ)1989年(平元)11月29日、和歌山市生まれ。7歳で体操を始め、和歌山北高から順大。今年4月にコナミ入社。高2の全日本選手権で総合12位に入り、歴代最年少でナショナル強化指定選手に。11年全日本学生個人総合初優勝。昨年の世界選手権で初の代表入り。163センチ、52キロ。