<女子テニス:東レ・パンパシフィック・オープン>◇第3日◇24日◇東京有明テニスの森公園◇シングルス2、3回戦ほか

 世界60位で、日本のエースに返り咲いたクルム伊達公子(42=エステティックTBC)が、“ため息”に切れた!

 11年全米覇者で同17位のサマンサ・ストーサー(29)との2回戦で、第2セットタイブレーク1点目にダブルフォールト。声援する観客の残念な思いがため息となると、「ため息ばっかり!」と激高。集中力を切らし、3-6、6-7で敗れた。森田あゆみ(23)土居美咲(22)も敗退した。

 ダブルフォールトの瞬間だった。クルム伊達の甲高い叫びが、会場中に響き渡った。「ため息ばっかり~!!」。両手を広げ、その手を振りながら激高だ。しかし、心からの叫びも、皮肉にもため息にかき消され、ため息の中、試合は終わった。

 ため息に、イライラが募りに募った。「ポジティブなものではない。エネルギーを周りに吸い取られる」。加えて、第2セットは4-2、5-3とリードを奪いながら、好機を逃したことで爆発寸前。そこに自らのダブルフォールトで、最大のため息が襲い、ついに切れた。

 伏線はあった。全米初戦敗退後、8月27日のブログで「どうして日本人の応援って、悪い時はこもる感じになるんだろう」と嘆いた。今大会前の22日のブログには「プレーが気持ちよくできるよう、ため息のないサポートをお願いします!(笑+本気)」と“警告”を発していた。

 外国では、日本ほどため息は出ない。ミスした時ほど、声援がほしいという日本選手も多い。しかし、ため息は日本人特有の期待の裏返しでもある。平日でも、約7000人の観客が詰めかけたのは、驚異のアラフォー、クルム伊達を応援するためだ。

 それでも「これだけたくさんの人が見に来る割には、テニスを見るレベルが上がってこない」とばっさり。不運だったのは、雨でセンターコートの屋根が閉まり、ため息が室内でこだましたことだ。ダブルスも敗れ、ため息の中、クルム伊達はコートを去った。【吉松忠弘】

 ◆他競技のため息

 テニスだけではない。卓球やバドミントンなど、テニス同様の対面室内競技では、ため息が強調される。しかし、2競技ともに、テニスほどラリー中に静かにする習慣はなく、ため息もそれほど目立たない。以前、松岡修造氏が、コート上で観客に「ため息はやめましょう」とため息禁止令を出したこともある。