<フィギュアスケート:グランプリファイナル>◇第1日◇5日◇マリンメッセ福岡

 大会最多タイの4勝目を狙う浅田真央(23=中京大)が、72・36点を出して首位発進した。表現面での見栄えにこだわり、早くも今季3着目の新作衣装で演技。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は回転不足となったが、細部までこだわった滑りでファンを魅了した。ソチ五輪の代表選考にも関わる大会で好スタートを切った。

 午前8時、会場の片隅ではさみで布地を切る音がした。浅田の関係者が裁縫していたのは新しくした髪留め。早朝に試着した浅田が「少し大きいかな」と見栄えにこだわりをみせ、4分の3ほどのサイズにするためだった。切ったのは2センチほど。それほど細部まで印象を重視した試合だった。

 髪留めと合わせてまとったのは藤色、ワインレッド、紫とグラデーション鮮やかな新作衣装。7月のアイスショーで着た紫とピンクの1着、連勝した10月のスケートアメリカと11月のNHK杯で着た淡い藤色の1着に続く今季3着目。「仮面舞踏会」を演じた09-10年シーズンと同じく“浅田史上最多枚数”の衣替え。全ては「どう見られるか」にこだわった選択だった。

 NHK杯での公式練習を見て、浅田陣営は「少し元気なく見えてしまうかな」という印象を抱いた。周りに黒を着る選手が多く、藤色の淡さが埋もれることを懸念。本人の希望も聞き、新作には藤色に加えて濃い色を採用した。「違う衣装も着てみて、その中で大きな大会で着られたらいいな」。審判の印象、テレビ映えなどを考慮して大きな大会=五輪での勝負服を決めるためだった。

 浅田

 新しいコスチュームで自分もすごくうれしい。見ている方にも、いろいろな変化を楽しんでもらえたら。

 午後8時半すぎからの演技では、衣装の鮮やかさで超満員6302人の観衆の目を楽しませ、演技でも魅了した。ショパン作曲「ノクターン」の調べに乗って滑り出すと、冒頭の3回転半。高速回転からの着氷に会場が沸騰する。惜しくも回転不足を取られたが、「感覚としてベストな状態になっていたので次につながる。私自身、良い感じで跳べたのであまり気にしません」。手応えがすべて。好感触に気分も波に乗り、ミスなく終えると両拳を何度も握り、胸の前で両手を合わせた。自然と満面の笑みが広がった。

 表現面などを示す演技構成点は34・91点で、11月のNHK杯での34・37点を上回る自己ベストとなった。衣装も含めた印象へのこだわりは、確実に結果に結び付いた。そして気持ちは7日のフリーに。再び衣装を替えて挑む。そして、2回の3回転半を約3年ぶりに組み込む。「攻める気持ちを忘れないでいたい」「質のいいものは尽きない。さらに、さらに上を目指したい」。わずか2センチまでのこだわり-。そんな向上心も尽きることはない。【阿部健吾】

 ◆演技構成点

 芸術要素を表す5つ項目で構成される得点。(1)スケート技術(2)演技のつなぎ(3)演技表現(4)振り付け(5)音楽の解釈で、0・25点刻みの各10点満点。女子ではSPは0・8倍、フリーは1・6倍して演技構成点として算出。この得点とジャンプなどの技術点を合わせて合計得点になる。