<卓球:JA全農世界選手権団体戦>◇最終日◇5日◇東京・代々木第1体育館ほか◇男女決勝

 日本のエースで世界9位の石川佳純(21=全農)が16年リオデジャネイロ五輪での雪辱を誓った。女子で団体世界ランキング3位の日本は、同1位の中国に0-3で完敗し、43年ぶりの世界一はならなかった。石川はロンドン五輪金メダルの李暁霞(26)にストレートで敗れたが、中国との差が縮まりつつあると実感した。

 中国の壁は、やはり厚かった。1歩も引かず、真っ向から勝負を挑んだ石川も、1ゲームも奪えずに、李にはね返された。「強かった。これが、世界女王の強さなんだと肌で感じた」。悔しさと、大会を終えた安堵(あんど)の気持ちが入り交じり、この日も少しだけ涙があふれた。

 第1ゲームがすべてだった。7-4とリードしながら、そこから6点を連続で失った。レシーブが安定せず、相手のサービスで、常に先手を奪われた。第1ゲームを落とすと、完全に主導権を奪われた。「中国に近づくには、レシーブを改善しないといけないと分かった」。

 1ゲームも奪えなかったが、村上恭和代表監督は「中国に通用したのは石川だけ」と成長を認める。世界最速といわれる李の前陣速攻に、以前は、まったく歯が立たず。空振りを重ねたこともあるという。しかし、この日は打ち合いだけなら、対等に戦えたラリーも数多くあった。

 数字上は完敗ながら、世界選手権の最大の舞台で、石川自身も「もっと強くなれるとも感じた」と前向きだ。大会前には「自分が2敗して負ける夢を5回も、10回も見た」。その重圧も、成長した精神的な強さで乗り切った。

 2年後にはリオデジャネイロ五輪が迫る。そびえ立つ中国という巨人の背中はまだ遠い。しかし、石川は「まだまだだけど、少しは近づけたかもしれない。リオでは何とかしたい」。敗れたが、31年ぶりの銀メダルは石川に明るい道筋を照らしていた。【吉松忠弘】