<飛び込み:日本選手権>◇第1日◇19日◇東京・辰巳国際水泳場

 飛び込み界にも、20年東京五輪の星が誕生した。水泳日本選手権の飛び込み競技が、東京辰巳国際水泳場で開幕。女子3メートル板飛び込みで、14歳の板橋美波(JSS宝塚)が初出場初優勝した。板飛び込みでの中学生の優勝は90回を誇る大会で2人目、15歳で制した98年の山下美沙子(石川・寺井中)の最年少記録を更新した。この日開幕したアジア大会(韓国・仁川)代表にも選ばれている板橋は、20年東京五輪でのメダル獲得を目標に掲げた。

 最後の演技で「前飛び込み3回半えび型」をきれいに決めると、板橋はホッとしたような表情を見せた。2位につけていた渋沢を引き離す高得点。1本目から最後の5本目までトップに立ち続ける完勝に「こんなにうまくできて、うれしいです」と、はにかんだ。

 昨年高飛び込みで3位に入ったが、板飛び込みは初出場。「表彰台に立てたらいいな」と臨み、その最上段に立った。高飛び込みでは馬淵よしの(80年)浅田梨沙(06年)らが中学生で優勝しているが、板を踏む筋力が必要で飛び出すタイミングも難しい板飛び込みは経験の少ない中学生には難しい。それでも、30歳の渋沢と並ぶ最高難度の演技を次々と決めて「自信になりました」と話した。

 もともと競泳をしていたが、小学3年の時に飛び込みの「1カ月体験」をして魅力に取りつかれた。「練習は厳しいけれど、うまく飛び込めた時は気持ちいい」という。指導する馬淵崇英コーチは「持って生まれたセンスが抜群。ジャンプ力もあるし、回転も速い。すでに演技の難易度は世界トップ」と絶賛する。

 昨年の東アジア大会で初めてシニアの国際大会に出場したが「緊張して普段通りできなかった」。それでも、この後すぐ行われるアジア大会で上位を目指し、2年後のリオデジャネイロ五輪は「出場を狙っています」。そして、本番は20歳で迎える東京五輪。「もっと練習してミスを減らし、メダルを取れるように頑張ります」。150センチ、42キロの小さな体には、大きな夢が詰まっていた。【荻島弘一】

 ◆板橋美波(いたはし・みなみ)2000年(平12)1月28日、兵庫・宝塚市生まれ。宝塚小1年の時にJSS宝塚で競泳を始め、3年の時に飛び込みに転向した。御殿山中2年の日本選手権高飛び込みで3位、同3年の今年は6月の室内選抜で高飛び込み優勝、8月の全国中学大会では高と板の2冠を獲得した。家族は元柔道選手の父秀彦さん(45)母美智子さん(44)と兄。