日本相撲協会前理事長の北の湖親方(55)が1日、大麻所持で逮捕された十両若麒麟容疑者(25=本名・鈴木真一、尾車)が、昨年9月2日に同協会の再発防止検討委員会が実施した「抜き打ち簡易尿検査」で、いったんは陽性反応を示していたことを明かした。検査当日に同委員会から「1、2回目の検査は陽性だったという報告を受けた」と告白した。協会側は同親方が理事長を退いた後の会見で「3回の検査とも陰性だった」と発表していたが、当時の協会トップがこの協会見解に異議を唱えた。

 昨年9月2日の「抜き打ち簡易尿検査」が実施された当時、理事長を務めていた北の湖親方が、若麒麟容疑者の検査結果についての協会発表に、真っ向から異議を唱えた。この日、当時の状況を詳細に明かした。

 北の湖親方

 理事長室にいた私は、大西先生と再発防止検討委員会の伊勢ノ海委員長(元関脇藤ノ川)から、検査結果について報告を受けました。1、2回目は陽性と出て、3回目に陰性に変わったから(検査場から)帰したと聞きました。「グレー」とかそういう表現はありませんでした。

 検査にはドーピング検査委員会の大西祥平専門委員(慶大教授)ら検査員と再発防止検討委員会の親方衆が立ち会っていた。同委員会は当日の会見で、露鵬と白露山が陽性反応を示したことを発表し、若麒麟容疑者について名前を伏せた上で「1人の力士は3回目の検査で陰性」とした。さらに北の湖親方が理事長を辞任後の同21日の会見では「1回目で陰性と判断したが、判断しにくい結果だったため、慎重を期して2回追加。いずれも陰性だった」と発表していた。

 今回、若麒麟容疑者の逮捕に伴い、検査結果が再び注目されているが、協会側はあらためて「3度とも陰性だった」と主張している。しかし、北の湖親方は強く反論した。

 北の湖親方

 報告は露鵬と白露山が警察の任意同行を受ける前と後にありましたが、若麒麟については同じ内容の報告でした。私は「そんなに簡単に陽性から陰性に変わるものなのか」と言った記憶もあります。

 自分の記憶と相反する協会見解に疑問を抱いた同親方は、1月31日に伊勢ノ海委員長に「若麒麟も1、2回目は陽性だったと報告しましたよね」と追及していたという。

 伊勢ノ海委員長は、このやりとりを認めた上で「当日は露鵬と白露山のことで頭がいっぱいで、若麒麟についてどう言ったかは記憶にない」と話した。北の湖親方の追求を受けた直後に大西教授に電話で確認。同教授は「私は1、2回目は陽性だったとは言っていない」と話したという。

 北の湖親方は理事長を辞任した後も理事にとどまっている。同容疑者の処分が決まる2日の理事会にも出席する。同親方は「理事会ではこの件を問題にはしない」というが「こういうことなら検査の信頼性にかかわる」とも訴えた。前理事長の告白が事実なら、なぜ協会はそれを隠そうとするのだろうか。