日本相撲協会巡業部は13日、夏巡業に参加中の関取衆に対し、巡業中は必ずけいこ場に姿を見せることを命ずる文書を配布した。通達を破った場合、理事会で処分を検討することもあるとした。巡業中のけいこ参加を促す通達はこれまでもあったが、理事会での処分まで踏み込んだのは初めてだ。効果あってか、朝青龍(28=高砂)ら上位陣はほとんど、この日の秋田県立体育館での巡業のけいこに参加。その中で、大関千代大海(33=九重)が無断欠席し、初の処分対象になる可能性も出てきた。

 早朝、秋田県立体育館の支度部屋で、1枚の通達文書が配布された。4項目のうち、2つが巡業でのけいこにかかわるものだった。

 1、関取衆はけいこ場に必ず顔を出すこと。特に上位の者は厳守すること。

 1、けいこができない者も自分の時間が終了するまで必ず土俵下にいること。

 実は最近は巡業のたびに、「巡業の心得」と題したけいこ参加を促す文書が配布されていた。だが、今回は後書きに「上記を守れない者は、厳重注意とともに理事会、及び各師匠に報告し対処します」と初めて明記された。

 「巡業ではけがをしていても、まわしを締めてけいこ場に姿を見せること」が角界の常識。だが、大島巡業部長は「最近はあまりにひどい状況が続いている」と指摘する。12日の青森・弘前での巡業でも、上位陣でけいこをしたのは大関日馬富士、琴欧洲のみ。札幌から約10時間かけた深夜の夜行列車移動で疲労困憊(こんぱい)となり、鶴竜、猛虎浪が季節性のインフルエンザ発症した事情もあったが、結果的にファンの期待を裏切ってしまった。

 この状況を打破するために巡業部首脳が協議し、異例の通達を出した。この日の秋田で初めて巡業を手掛けた貴乃花副部長も「苦肉の策」と説明。ただ、早速、効果はあった。8日の福島・相馬市での巡業を「無断欠勤」したばかりで、サボり常習の横綱朝青龍もけいこに参加。「昨日、食事の時に部長から『もっとけいこを下の者につけてくれ』と言われていたからね」と話した。

 だが、千代大海だけはそれを無視して支度部屋にいたままだった。これには大島部長も激怒。かつて千代大海には「けいこができないなら引退しろ」と怒った経緯もあり、「次(15日、岩手・八幡平巡業)もそうなら呼び出して厳重注意する」と宣言した。千代大海は報道陣に「そういうことなら話したくない」と取材拒否。この状況が続くようだと、処分の対象第1号になることは間違いない。【柳田通斉】