<大相撲名古屋場所>◇9日目◇19日◇愛知県体育館
東前頭13枚目の豊真将(29=錣山)が猛虎浪(26)を押し倒し、9連勝を飾った。同じく全勝を守った横綱白鵬(25)をピタリと追走。野球賭博問題の影響で日本人力士18人が謹慎休場する中、「日本代表」として異例の場所を盛り上げる。丁寧に所作をこなし、元軍人・山本五十六の言葉「男の修行」を毎日唱和する硬派な男が、夏の名古屋を熱くする。
「ゴツン!」。頭と頭がぶつかる鈍い音は、会場2階席まで響いた。豊真将は立ち合いで、頭から当たった。先場所は、頸椎(けいつい)を痛めて途中休場。首への負担もかまわず、激しくいった。左前まわしを引きつけ、右でおっつけ。止まらずに押し倒した。「いいぞ、日本一!」。観客から声が飛んだ。
声援は日に日に多くなっている。「全勝だから、お客さんの期待も高まっているのかなと思います。こういうチャンスは、あまりない」と顔をほころばせた。自己の連勝記録にあと1と迫り「それも更新したいですね。体は自分でも動いてるなと思う」と手応えを口にした。
今場所、謹慎中の力士は全員が日本人で、十両以上だけでも10人。日本人唯一の勝ちっ放しとして、高まる期待に応え続けている。師匠の錣山親方(元関脇寺尾)は「相手が出てくるより、自分から攻められるようになった」と成長を口にした。首を痛めたのは、けいこで受け身になった時のこと。反省を生かし、動きが自然に進化した。
日本代表らしく、硬派を貫く。花道から入り、支度部屋に引き揚げるまで、すべての所作を大きく丁寧にこなす。「ピシッとやると、大きく見えて、相手を威圧できる。きっちりやって見せるのも、相撲の一部なんです」。6年前の入門当時、師匠から教えられたことを、今も忘れずこだわり続けている。
道場訓も男くさい。朝げいこ終了時に、山本五十六の「男の修行」を全員で唱和する。「一、苦しいこともあるだろう。一、言いたいこともあるだろう…」。一連の不祥事で角界が危機にある今、じっと我慢して闘う姿は、言葉に重なる。豊真将は「親方の好きな言葉。唱和することで、少しでも意識していけたらいい」と説明した。
勝ち越した前夜は、応援に訪れた埼玉栄高時代の友人と食事をした。「みんなガンガン、プレッシャーをかけてくる。『このまま優勝だ』とか。でも、意識もしていないし、プレッシャーにもなんない」。けがによる休場明けの名古屋場所。現役時代、鉄人と呼ばれた錣山親方は「オレが想像もつかないずぶとさがあいつには、あるんでしょう」とつぶやいた。【佐々木一郎】

