日本相撲協会の武蔵川理事長(62=元横綱三重ノ海)が、辞任を表明するはずが一転して、職務復帰を宣言した。5日、東京・両国国技館で理事会後に会見。胃がんの手術を受けるなど体調面の不安と、一連の不祥事の責任を取るつもりだったが、他の理事や親方衆の説得を受けて翻意した。力士出身でない理事長が誕生することへの身内の強い抵抗感に、角界トップの心が動かされた。だが、12日か23日の臨時理事会で辞任する見通しで、後任選びは難航必至となった。

 7月4日以来、約1カ月ぶりに姿を見せた武蔵川理事長は、ほおの肉が落ちていた。記者会見では、7月21日に胃がんの手術を受けたことを明かした。進退について聞かれると「とにかく今は、協会再生に向け、協会員全体で、この難局を乗り切るために、いろんな意見を、改革に向けてまとめ上げていかなきゃいけない。そういう気持ちでいっぱいです」と、明言を避けた。

 この日、辞任を表明するはずだったが、急転した。臨時理事会直前。協会関係者によれば、武蔵川理事長は役員室で出羽海理事(元関脇鷲羽山)らに対し「体調面に不安がある。もう退こうと思う」と打ち明けた。だが各理事らから慰留された。「復帰して即辞任では混乱するだけ。懸案事項がもう少し収まるまで頑張ってほしい」と諭された。

 この後、有志による会合を終えた若手から中堅の親方数人が役員室を訪れ、続投を熱望された。武蔵川理事長は「う~ん」とうなり、考えを変えた。理事会は約15分で終了。放駒理事(元大関魁傑)は「(武蔵川理事長の当面の続投に)異論がなかったから、すぐに終わった」と話した。

 ここまで親方衆が慰留するのは、外部による理事長誕生への強い抵抗感がある。現時点で、力士出身理事の後任は見通しが立っておらず、この日に武蔵川理事長が辞任すれば、村山理事長代行の理事長就任への流れができかねない。

 ただ、体調面などを考えると、続投も「当面」にすぎない。武蔵川理事長の会見は5分36秒で終了。陸奥広報部長(元大関霧島)は「辞めるのは簡単だけど、続けるのは大変。体調が心配だ」と話した。体重は約10キロ減り、首の痛みもあるという。理事長職は、通院しながらこなしていくが、体力的に厳しい状態が続く。年内には、武蔵川部屋を弟子の藤島親方(元大関武双山)に継承させることも決断している。

 監督官庁の川端文科相は、続投の報告を受け「何度も言ってきたことですが、文科省としては、自主的に自覚を持ってやってください、ということです」とコメントした。8月中に、武蔵川理事長は辞任する見通しに変わりはない。この日は乗り切ったが、角界の内外ともに納得できる道筋は見えていない。