横綱白鵬(25=宮城野)が、大相撲の八百長問題が本格化して以降、初めて公の場で発言した。9日、都内の部屋で稽古後に会見。八百長への関与や見聞きしたことがあるか問われると「ないということしか言えないじゃないですか」と答えた。誤解を与えかねない発言だけに、部屋関係者が後から急きょ、日本相撲協会に電話で補足説明した。またこの日、白鵬は都内のホテルで、特別調査委員会の事情聴取を受けるなど、慌ただしい1日となった。

 午前中の白鵬の発言を受けて、宮城野部屋関係者は午後になって急きょ、相撲協会に電話した。ある部屋関係者は「誰から誰にとは言えないが、誤解が生じないように相撲協会に連絡した」と明かした。モンゴル出身の白鵬は日本語が堪能とはいえ、微妙な言葉づかいで食い違いが生まれかねない状況となり、白鵬周辺はドタバタの1日だった。

 発言は八百長問題が本格化して以降、初めて公の場で話した会見でのものだった。最初にファンに謝罪し頭を下げた後は、質問と答えがチグハグな場面が相次いだ。3度目となる八百長への関与や見聞きしたことがあるかどうかの質問には「それは…」と話し、一瞬間が空いて「フッ」と苦笑い。続けて「ないということしか言えないじゃないですか」と、質問者の顔を見ながら話した。

 八百長問題ではすでに、計4人もの関与者が出ている。そんな前代未聞の状況は普段は冷静な白鵬をも混乱させたのかもしれない。また関与者の存在は繰り返し報道され、大きな社会問題になっている。その中で、現役を代表する立場の横綱として「八百長はない」とは断言しにくい状況だった。会見では冒頭から最後まで目を充血させ、うっすらと涙をためたままだった。

 八百長問題については2日に少し発言したが、その後は貝になっていた。6日からは体調不良に陥った。1週間ぶりの肉声だけに臆測を呼びかねないが、相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は「話を聞く限り、そんな風に(八百長を知っていたと)取れないこともないけれども、本人によく確かめてもらわないと。言葉足らずだったかも分からない」と、冷静に話した。

 夕方にはホテルの一室で特別調査委員会から事情聴取を受けた。八百長疑惑が浮上する14人以外も、特別調査委員会に必要とあれば携帯電話や銀行の預金通帳の提示を求められていることについても「そうじゃないですか」と受け流した。約1時間の事情聴取後は無言で引き揚げた。

 白鵬は会見で「心に1つ、大きな穴があいた。本当にさびしい」と言った。現役トップの言動は、今後も注目される。