<大相撲初場所>◇12日目◇24日◇両国国技館

 東十両12枚目の高見盛(36=東関)の幕下降格が、濃厚になった。東十両7枚目の徳勝龍(26)に突き出しで敗れ、3勝9敗。残り3日間全勝すれば、他の力士次第では十両残留の可能性もあるが、極めて低い。場所前に幕下に落ちれば現役を退く意思を示していた高見盛は取組後、前日までとは別ルートで“逃走”。パニック気味に報道陣を避ける中で「千秋楽まで取らなきゃ」と15日間フル出場する考えを口にした。

 引退が現実味を帯びてきたショックは、大きかった。西の支度部屋を出た高見盛は、通常の囲み取材エリアで待ち受ける報道陣を尻目に、別ルートで“逃走”した。50人近くの記者とカメラマンが追う中、国技館の地下通路を通り抜けた。

 早歩きしながらの第一声は「申し開きは一切、致しません」。その後は「言い訳は一切しません。したくないので。明日も相撲を取らなきゃいけない。千秋楽まで取らなきゃいけない。集中したい」と続けた。場所中に「引退」をほのめかせば、千秋楽まで相撲を取れない慣例がある。無駄口はたたかず、最後まで戦い続ける意思を口にした。

 地上に出ても、歩みは止めなかった。多くの通行人の視線を浴びながら、約70メートル先のJR両国駅まで報道陣を引き連れて突進。タクシーへと乗り込んだ。思い通りにいかない相撲が続き“角界のロボコップ”の思考回路は壊れたのか…。前日までは連敗が続いても立ち止まり、冗談交じりの話もしていたが、まるでパニックに陥ったような変貌ぶりだった。

 朝からピリピリムードだった。いつもは見学可能の朝稽古も、この日は部屋の玄関にカギを掛け、報道陣をシャットアウト。朝食後、痛めている右肩の治療に出掛ける際も、小走りで自転車に乗り込み、無言で立ち去っていた。

 相撲人生の土俵際で迎えた一番も、見せ場なく敗れた。立ち合いで右に変わった徳勝龍の突き押しに、顔を上げてズルズルと後退した。「頑張って~」という大声援が、悲鳴とため息に変わる。泥沼の8連敗で幕下陥落が濃厚になる9敗目に、うなだれるように肩を落とした。

 番付を編成する審判部の鏡山部長(元関脇多賀竜)は、高見盛の十両残留について厳しい見方を示した。「あり得ない話するなよ。状態見ろよ、状態。もう終わりじゃん。もう落ちるのにカウントしている」とバッサリ。ただ、他の力士の星次第で、わずかながら生き残る可能性も口にした。先場所、鳰の湖が西十両11枚目で10敗しながら残留しており「鳰の湖の例もあるからね。今日でも確定なんだけど、明日負けたら確定だ」と、最後通告した。

 現役を続けるために、乗り越えなければいけないハードルは極めて高い。だが、引退危機に直面しても、最後まで戦う意思は貫くつもりだ。不器用だが、それが「どんなにボコボコにされても立ち上がる」という高見盛の生きざまだ。【木村有三】