<大相撲初場所>◇6日目◇16日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(29=宮城野)が、東前頭3枚目の遠藤(24)を手荒い相撲で押し出した。館内の「遠藤コール」を封じるように、張り手、かちあげと荒技を連発。冷静さを欠きながらも力の違いを見せて、和製ホープの4度目の挑戦も退けた。史上単独最多33度目優勝へ、日馬富士(30)とともに全勝を守った。

 いつも以上に、白鵬の目は鋭かった。相手は平幕とはいえ、人気の遠藤。仕切りから館内は「エンドー、エンドー」と大コールが響いていた。「燃えるという意識はなかったけど、どっかにあったんでしょうね」と白鵬。気持ちの高ぶりは、荒々しい相撲に表れた。

 立ち合いから、なりふり構わなかった。遠藤の左側頭部に右手で強烈な張り手をかました。フラつく相手に、今度は右肘を曲げてエルボー気味のかちあげを食らわせた。その直後に、右を差されたが、すぐに引き離す。右に回り込み、再び体当たり。体勢を入れ替え、最後は押し出した。

 伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)は「稽古をつけてやってるんだという相撲に見えた。それだけ気合が入ってたんじゃないの」と話した。攻めの厳しさについて問われた白鵬も「厳しいかどうか分からないけど、いい相撲を取ったんだと思います」と納得。だが、全力士の手本となるべき横綱として、冷静さを欠いたのは明らか。北の湖理事長(元横綱)は「ちょっとムキになっていた」と心の乱れを指摘した。

 先場所も、燃える心を抑え切れない場面はあった。8日目の照ノ富士戦でダメ押しして、師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)が審判部に呼び出された。闘争心は、時に荒々しい動作に表れてしまう。だが、冷静さを欠きながらも、白星だけは積み重ねる。和製ホープの4度目の挑戦も退け、全勝を守った。早くも勝ちっ放しは日馬富士と2人だけ。「一番一番、やっていくだけです」。大鵬超えの33度目優勝へ、最後は落ち着いた表情で支度部屋を後にした。【木村有三】