CSファーストステージで勢いづいていたはずだった巨人だが、ペナント中の「勝てない巨人」に戻ってしまった。なぜ戻ってしまったのか? やはり勢い任せの“ノビノビ野球”には限界がある。初回の攻撃が、その限界を感じさせた。

先頭打者の坂本勇が中前打。この時点で、ここまで巨人のCSでの戦いぶりを見ていた人なら、次の攻撃は「ヒットエンドラン」か「盗塁」だと想像したのではないか。その予想通りカウント2-1からエンドランを仕掛けてファウル。打った球は見逃せばボールになる内角高めのカットボールだった。制球の定まらない大瀬良を助け、結局は次球の内角直球を打って最悪の併殺に終わってしまった。

勝負事には「駆け引き」がある。積極的に仕掛けていく野球でも、いつも同じ作戦では手痛い目に遭うし、相手も怖くない。この場面、私ならじっくりと打たせるか、手堅い送りバントをさせた。ノビノビとした積極的な攻撃をするにしろ、相手に「今日は違う戦いをする」と思わせることが大事。最悪なのはその裏に巨人が失敗したエンドランを逆に広島に決められ、先制点に結び付けられてしまったこと。CSファーストステージの勢いは、この時点で吹き飛んでしまった。

あとはペナントと同じ戦い方。3回無死一塁には8番の小林に送りバント。正直、ガッカリした。初回に手堅く攻め、この場面でバスターやヒットエンドランを仕掛けていい。なにか初回の失敗におじけづき、広島に勝てなかったシーズン中の野球に戻ってしまったような印象を受けた。

4回の失点も初球を痛打され、継投もシーズン中と同じパターン。CSファイナルの初戦に信頼度の高いメルセデスを先発させることのできたアドバンテージは、まったく生かせなかった。(日刊スポーツ評論家)