野球競技の開幕戦は、日本がドミニカ共和国にサヨナラ勝ちし、白星スタートを切った。国際大会の経験豊富な日刊スポーツ評論家・上原浩治氏(46)は、随所に感じた硬さから、あらためて国際大会の難しさを痛感。初戦から厳しい戦いとなったが、次戦へ向けての修正を期待した。

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劇的なサヨナラ勝ちで、ドミニカ共和国を下した侍ジャパンだが、あらためて初戦の難しさを感じた。私自身もアテネ五輪と第1回のWBCで初戦の先発を任されたが「絶対に先に点をやれない」という思いが強かった。その気持ちは野手であれば「先に点を取りたい」と同じだろう。それが硬さにつながってしまう。

まずは先発した山本だが、初戦の硬さを感じた。それでも6回まで0点で抑えるのは「さすが」と言っていい。しかし、その重圧は、2番手で登板した青柳に倍増ししてのしかかった。中継ぎ投手の立場でいうと、0-0のまま終盤の7回から登板するというのは、普段のシーズンの戦いでも嫌なものだが、国際大会の初戦となれば想像を絶する重圧がかかる。失点したが、とても責める気にはなれない。

攻撃面でも焦りが見える場面があった。1点をリードされた8回裏1死二塁、吉田正のレフト前ヒットで、二塁走者の山田が本塁でアウトになった。突っ込ませたらクロスプレーになり、セーフの可能性はあったが、1アウトという状況を考えればストップでいい。1死一、三塁という状況なら犠牲フライでも同点だし、勝負をかけるなら吉田正に代走を送って走らせ、逆転まで考えられる場面になった。硬くなるのは選手だけでないのだろう。

ラッキーだったのはドミニカのストッパーが明らかに力不足だったこと。9回裏から登板したが、1死後の一ゴロでベースカバーに入らずに内野安打。投球そのものもいまひとつだが、このプレーは問題外のプレー。相手のミスに救われ、逆転のムードは盛り上がった。

普段の試合なら、青柳ももっとリラックスして投げられただろう。8回裏の走塁判断もなかったかもしれない。もしかすると、9回裏に登板したドミニカの投手も、もっといい投手なのかもしれない。

ただ「まさか」が起きるのが国際大会。大事なのは、次の試合で同じミスを繰り返さないこと。9回に失点した栗林も強化試合での巨人戦の登板は素晴らしかったが、表情に余裕がなかった。「ルーキーだから仕方ない」というのは、実戦のマウンドでは関係ない。次回の登板まで、ブルペンでしっかりと投げ込み、修正すること。各国とも、やはり投手陣は駒不足。今試合のように最後まで諦めなければ、必ずチャンスはある。諦めないで戦えば、必ず金メダルは取れると思っている。(日刊スポーツ評論家)

日本対ドミニカ共和国 7回表ドミニカ共和国2死一、二塁、バレリオ(後方)に先制の2点適時二塁打を浴びる青柳(撮影・河野匠)
日本対ドミニカ共和国 7回表ドミニカ共和国2死一、二塁、バレリオ(後方)に先制の2点適時二塁打を浴びる青柳(撮影・河野匠)