雨の日のゲームプランは、1点ずつの積み重ねがとても大切になってくる。先行して中盤までなるべくテンポよく試合を進めたい。天候の心配がなければ序盤から犠打を多用する必要はないが、この日の天候であればそうもいかない。いつにも増して犠打の正確性が求められる。

その中で、1点リードで迎えた楽天4回裏の攻撃に反省材料があった。無死一、二塁で7番黒川は犠打を失敗。バントは投前に転がり、三塁で二塁走者が封殺された。この場面でのバントは、三塁手に処理させるのがセオリーになる。黒川は三塁側を意識するそぶりすら見せなかった。

雨天、天然芝の球場、ぬかるんだ土、ぬれたボール、得点差。そういうことを考えれば、黒川のバント失敗は防げたミスだった。直後、辰己が初球セーフティーバントを決めて1死満塁とし、続く太田の一ゴロでは、中村晃がホームに投げられず、一ゴロで処理するのが精いっぱい。この間に何とか2点目を挙げた。辰己、太田で黒川のミスをカバーした格好となった。

黒川は2軍で打率3割の数字を残して1軍に上がってきたが、1軍では求められるものは変わってくる。2軍では結果を出さなければチャンスはつかめない。だが、昇格すれば犠打や進塁打の必要性も出てくる。主軸だった2軍では犠打は必要はなくとも、1軍ではチームに貢献する打撃が出てくる。犠打、進塁打という部分において、黒川の準備不足は否めなかった。

5回表、ソフトバンクは三塁を狙ったグラシアルがぬれたグラウンドで、スライディングが滑り過ぎ、三塁を大きくオーバーランして手痛い走塁死となった。5連打で1点に終わった背景には、やはり天候の影響があった。試合は6回裏の楽天攻撃中に降雨コールドゲーム。楽天にとっては薄氷を踏む勝利だった。(日刊スポーツ評論家)

楽天対ソフトバンク 5回表ソフトバンク1死一塁、中村晃の左前打から三進したグラシアル(左)は塁に戻れずアウトとなる。三塁手黒川(撮影・滝沢徹郎)
楽天対ソフトバンク 5回表ソフトバンク1死一塁、中村晃の左前打から三進したグラシアル(左)は塁に戻れずアウトとなる。三塁手黒川(撮影・滝沢徹郎)