阪神は理想に近い攻撃を見せた。その中で、盗塁に関して思うことがあった。

途中出場した佐藤輝が7回1死から中前打で出塁。次打者の2球目、投手がモーションを起こす前にギャンブルのような形でスタートを切った。投手がすぐには投球しなかったため、気付かれる前に自ら止まり、帰塁した。この仕掛けは「あり」だと思った。

阪神はもっと盗塁を仕掛けてもいいと思っている。誰が走者でも気を緩められない空気を作れれば、相手には相当な重圧になる。「スタートを切った」という既成事実を積み重ねていくことで、相手の集中力を分散させられる。投球の質を落とすことができる。

1、2番コンビの近本と中野は本来、30盗塁を期待できる選手。この試合の序盤、DeNAの左腕・東から一塁でも、二塁でも走れそうなタイミングがあったように見えた。グラウンド状態があまり良くなかったこともあるが、シーズンで何度も対戦する相手だけに、スタートしてみても面白かったのではないか。痛いアウトもあるかもしれないが、その既成事実が、ロースコアの試合で大きな武器になっていくと思う。

オープン戦とはいえ、ここまでよく点を取れている。野手陣は上位から下位までしっかり仕上がっていると感じた。この日も本塁打を放った前川の成長は大きい。打撃をマイナーチェンジしていく中でも、軸がぶれず、バランスがいい。長打を狙いながら、自分の長所であるレベルスイングは変えずにやれている。

シーズンでは6番を打つ構想のようだが、今の阪神打線なら、塁に走者がいる状態で6番に回ってくるケースが多くなる。そこで前川が今の調子で応えることができるなら、昨年以上の得点力アップが見込める。(日刊スポーツ評論家)