虎の新助っ人はナイスガイだ。そう確信した一幕がある。6月下旬、入社1年目で阪神担当を拝命した私は、鳴尾浜の日差しに体力を削り取られていた。緊張と疲労で硬直した体をほぐそうと、上半身を左右にひねっては腰からポキポキと情けない音を鳴らしていた、まさにその時だ。阪神の新外国人エフレン・ナバーロ内野手(32)が、試合へ向かうため選手寮の虎風荘から出てきた。

エフレン・ナバーロ
エフレン・ナバーロ

 大学時代、第2外国語としてスペイン語を2年間履修していた筆者。記憶を総動員し、頭の片隅に残っていたフレーズを引っ張り出した。「ブエナス タルデス!(こんにちは)」。ナバーロは驚きながらも「オー! ブエナス タルデス!」とさわやかな笑顔で返してくれた。私の疲労をどこかへ追いやってくれるほどのスマイル。私は心で「グラシアス(ありがとう)」と感謝した。

 入団会見ではモヒカンヘアをバッチリと決めて登場した。タテジマもなかなか似合って「グアポ(かっこいい)」だ。取材時は質問した記者の目を真っすぐに見つめて答えてくれる。2軍戦後の取材が終わると、周囲に「イイイチニチヲ」と覚えたての日本語で別れのあいさつ。報道陣のハートもガッチリつかんでいる。

エフレン・ナバーロは来日初打席初安打となる右前適時打を放つ(2018年6月29日撮影)
エフレン・ナバーロは来日初打席初安打となる右前適時打を放つ(2018年6月29日撮影)

 日本への適応力の高さはグラウンドでも示した。2軍で出場した3試合すべて安打を放ち、評判通りシュアな打撃を披露。守備では一塁、外野を器用にこなした。6月29日ヤクルト戦(神宮)から1軍に昇格し、すぐさま代打でタイムリーの鮮烈デビュー。日本での成功に向けてトントン拍子に前進している逆襲の使者が、阪神を「グロリア(栄光)」へと導く。【阪神担当 吉見元太】