3年連続日本一を成し遂げたソフトバンク。日本シリーズMVPを獲得したグラシアルら主力の活躍はもちろんだが、ベンチにも欠かせない選手がたくさんいた。その1人が主に抑え捕手を務めたベテラン、高谷裕亮捕手(37)だ。
高谷は西武とのCSファイナルステージ第2戦で飛球を追った際、三塁側ベンチ横の棚に顎をぶつけ、裂傷を負った。すぐに交代し病院で6針縫合。それでも翌日の第3戦にはばんそうこうを顎に貼りながら元気に球場に現れ、そのまま途中出場でマスクをかぶってみせた。
CS突破を決めた翌朝、福岡に向かう羽田空港でひげの伸びた高谷の姿があった。「ケガしているところだけそれないので、全部残してるんですよ」。顎を手でこすりながら、照れくさそうに笑った。なかなか抜糸するタイミングがなく、日本一まで口周りを真っ黒にしたまま戦い抜いた。
実は痛めていたのは顎だけではなかった。高谷がぶつかった棚は2段になっており、その下段が胸元に激しく当たっていた。「バットを振るのも、ボールを投げるのも痛い」ほどだったが、苦しいそぶりをほとんど見せることなく、試合終盤のホームベースをどっしりと守り続けた。
シーズンを終え、助っ人の帰国第1号となったミランダが福岡空港をたった26日、高谷は例年通り見送りのため駆けつけた。やっと抜糸を終えてひげをそることができた高谷は、まだ痛みが残る胸でぎゅっとミランダを抱き、保安検査場をくぐる直前まで別れを惜しんだ。戦力としても精神的支柱としても大きな存在。高谷のような頼れるベンチ陣がいたから、チームは頂点にたどり着いた。【ソフトバンク担当 山本大地】