未知のウイルスは野球界にも深刻な影響を及ぼしている。4月23日付の日刊スポーツでルートインBCリーグの「消滅危機」と報じたが、関係各所を取材していて感じたのは、開幕にこぎ着けるべく、トップが奮闘しているということだ。

14年に発足した一般社団法人日本独立リーグ野球機構は日々変化する情勢に対応するため、2人の医師が新型コロナウイルス感染症のアドバイザーに就任したと4月17日に発表した。馬郡健会長(四国IL代表)が「独立リーグは事情も違う。客席が満席になることはそれほどありません。最後の段階は専門家の判断も仰ぎたい」と説明すれば、村山哲二副会長(ルートインBCリーグ代表)も「アドバイザーの意見や他のスポーツ団体の動向も踏まえて判断したい」と話した。

独立リーグは地域貢献を重視するとともに、NPBを目指す若者の受け皿になってきた。今回の取材で何人もが話したのは選手の胸中だった。「今年1年が勝負の選手もいっぱいいる。秋にドラフト指名されなければ引退する選手もいる」。たとえ無観客試合を敢行しても、せめて、スカウトの視察を許可できるなら、緊張感を保ってプレーできる。

着想がある。たとえば視察で訪れたスカウトに、試合のベスト3の選手を選んでもらう。球団によって補強戦略は異なり、守秘義務もあるから、任意の無記名投票でOK。期間(たとえば1週間)を決めて、推し選手の累積ポイントを公表していけば「プロの目」に触れられる。(もちろん、ひそかに目を付けている隠し玉まで明かすことはないだろう)。試合は当然、オンラインでも中継する。

選手個々への注目は増すだろうし、ポイントがドラフト指名に影響力を持たなくても野球好きのファンを独立リーグに目を向けさせるキッカケになる。「毎日がトライアウト」。そんな合言葉が盛り上げに一役買うかもしれない…。何かいい案はないかなあ? 知人と雑談していたら、こんなアイデアはどうかと言う。

「野球関係者が投票するのもいいよね。選手同士での推薦だと野球の能力で投票になると思うのでスカウトに近い目線になるかな」

僕の私案は「現場感覚」ではありえない、荒唐無稽な空想にすぎないが、この窮地だからこそ大胆にチャレンジできる。いろんな着想を広げて新たな世界をつくっていく。コロナ時代を生きるコツかもしれない。

余談は続くが「人生の特等席」という野球映画がある。クリント・イーストウッド扮(ふん)する大リーグの名物スカウトは老い、最後の視察で見つけたもの…。いろんな見方ができる。僕は原題「Trouble with the Curve」がすてきなメッセージそのものだと思う。人生、どこで、どんなキッカケがあるか分からない。そんなエールにも映った。

日本に独立リーグが誕生して15年目、想定外の岐路に立つ。多くの若者が自らを表現し、誰かが才能を見つける場であり続けること。苦境を乗り越える姿を見守りたい。【酒井俊作】