プロ野球のキャンプが始まった。新型コロナウイルスの影響もあってオフの期間が短く、例年とは違った日々になるのではないか。自分の中では、開幕から逆算し、体作りや技術の向上を図る期間だと思っている。「そもそも」を見誤らないことが大切だ。

04年2月、横浜の春季キャンプで小谷正勝コーチの見守る中、投球練習する佐々木
04年2月、横浜の春季キャンプで小谷正勝コーチの見守る中、投球練習する佐々木

投手コーチ時代、キャンプの序盤に選手を3グループに組分けていた。

(1)あまり動けていない

(2)けがをしない程度に動ける

(3)ほぼ仕上げに近く動ける

(1)~(3)の選手を、都合上で同じメニューにすることは気をつけないといけない。最も注意すべきは(3)。状態をバックさせず、前に進めなければいけない。

組分けの方法はシンプル。走っている姿、投げる姿をしっかりと観察した。プロ野球選手は基礎体力が高いので、自主トレをやってこなくても3日くらいは何となく動けるが、4日目になれば状態が如実に出る。特に瞬発力が落ちてくる傾向が強かった。

新人の場合、キャンプのある時期までは観察期間としていた。家庭環境、どのような人に多くのアドバイスを受けたか、その中での理解度…。これらがある程度、分かるまではアドバイスは控えるようにしていた。選手を迷わせることのないような話術、指導のタイミングも大切になる。

キャンプでの球数が話題になることが多いが、これも個人差がある。制球に難がある人はしっかり投げ込んで、強い球でストライクを投げるリリースポイント、感覚をつかむしかない。

スピードを度外視し、4段階のレベルで振り分けていた。

(1)ストライクを投げる

(2)2分割のゾーンへの投げ分け

(3)4分割のゾーンへの投げ分け

(4)9分割のゾーンへの投げ分け

思ったところに投げられないのに、コースの出し入れの練習をする投手を見かけるが順番が違う。まずは、ストライクを投げ続ける練習をしてみてはどうか。

経験上、投手は肩をつくり始めてから仕上がるまで20日前後かかる。キャンプ後半の時期になると、首脳陣の頭の中で仕事場も決まってくるだろう。公式戦のゲーム日程も出ているので、長いイニングを投げる投手は投げ込む必要がある。

リリーフ投手は、先発とは異なる。昨年はコロナの影響で10連戦以上の長期連戦も見られたが、シーズンの基本は6連戦。つまり、6連投できる体と肩が必要不可欠になる。練習方法として、キャンプ終盤からオープン戦にかけ、暖かい日に試合を想定し、20球ぐらいで投げられる訓練をするのがいい。

新戦力の発掘ももちろんだが、ルーキーだった選手の2年目の成長も非常に楽しみな要素だ。今年ならロッテの佐々木君、ヤクルト奥川君、阪神西君らが挙がる。どのようにプロ1年目を過ごしたのか。兆しが出始める頃である。(次回は今月下旬掲載予定です)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算24勝27敗6セーブ、防御率3・07。79年から投手コーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団でコーチ、13年からロッテ。17年から19年まで再び巨人でコーチを務め、多くの名投手を育てた。