エンゼルス大谷翔平投手(27)が、投打ともに自己ベストの結果でメジャー4年目を終えた。二刀流として完走した歴史的なシーズンを、担当記者が5回連載で振り返る。

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開幕当初から、大谷の表情は豊かだった。ファンの心をつかむ屈託のない笑顔は1年目から変わらないが、ベンチではチームメートとの会話を楽しみ、今季は相手選手とも塁上で積極的にコミュニケーションを取る姿が目立った。冷静沈着なプレーだけでなく、前面に出す気迫、怒り、いら立ち…。さまざまな感情が見られたシーズンとなった。

試合前、ベンチでマーシュ(右)のヒゲを引っ張るエンゼルス大谷(9月29日、撮影・菅敏)
試合前、ベンチでマーシュ(右)のヒゲを引っ張るエンゼルス大谷(9月29日、撮影・菅敏)

開幕直後、大谷は試合への心構えについてこう語っていた。「繊細になりすぎないように、純粋にゲームを楽しんで活躍するのをイメージして、やっていければいいなと思ってます」。ありのままに、求めていた最高レベルの舞台での野球を楽しむ-。シンプルに、全力プレーで駆け抜けた。

DHを解除し、メジャーの公式戦で初めて「2番投手」のリアル二刀流で出場した4月4日のホワイトソックス戦。本塁打を放ち、祝福する三塁コーチの手を強くたたいた。マウンド上では力強くガッツポーズし、ほえた。「感情を示し、見ていて素晴らしかった。自由に、解放されたような感じだった」(マドン監督)。その後もシーズン中、死球を受けて相手投手をにらみつけるように怒りを示したこともあれば、ボークを連発し不可解な判定にいら立つこともあった。

豊かに変化する大谷の表情は、試合の中継カメラでも多く捉えられた。スーパースター軍団の仲間入りした7月のオールスター。ホームランダービーでは「疲れたー!」と声を発し、疲弊した様子がズームアップされた。対戦したナショナルズ・ソトと健闘をたたえ合い、他球団の選手たちとも熱い抱擁。翌日の試合も存分に楽しみ、満面の笑みを見せていた。

ファウルボールがベンチに飛び込み驚いた表情を見せる大谷(9月1日、撮影・菅敏)
ファウルボールがベンチに飛び込み驚いた表情を見せる大谷(9月1日、撮影・菅敏)

今季の試合後のヒーローインタビューを担当した球団OBのホセ・モタ氏に日本語を教え、その代わりにスペイン語を学び、中南米出身の選手とも積極的に交流した。同じく球団OBのティム・サーモン氏は「ありのままによく笑い、エナジーや興奮を生んだ。メジャーでのプレーがより心地よく、落ち着いたんだろう。皆言うけど、よくしゃべるようになったと思う」と証言する。タイガース・カブレラから塁上でちょっかいを出されるなど、他球団の選手からも注目された。

投打で完走したメジャー4年目。今まで以上に二刀流でフル回転したシーズンを振り返り、「すごい楽しい1年だった」と言った。あらゆる表情が、その充実感を物語っていた。【斎藤庸裕】(つづく)