1月9日、岩手・陸前高田市の成人式は黙とうから始まった。出席者159人の中にはロッテ佐々木朗希投手(20)の姿もあった。戸羽太市長(57)は壇上から思いを口にした。

「皆さんの20年間。我慢、我慢、そして我慢。そういう20年間であったんじゃないかなと、そんなふうに思います」

小学3年生で東日本大震災があり、この2年間は新型コロナウイルス感染症との闘い。市長は後日の取材で「自我が芽生えて、小学校に入ってからの年月ですから、本当に苦労をしたんだろうなと。不可抗力とはいえ、大人として申し訳ないなという気持ちはいつもあります」と新成人たちを気遣った。

市街地の大半が大津波に襲われ、甚大な被害を受けた。雪もちらつく日の悲劇から11年。「全国の皆さん、全世界の皆さんから応援をいただき、復興を進めることができ、ハード面の事業はほぼ終わりました」と現状を説明した。約10メートルかさ上げされた土地に新たな市街地が造成された。

捉え方も少しずつ変化している。近年、市内の小学校で防災教育が本格化し始めた。児童の大半は震災後に生まれた。彼らに「3・11」を伝える。泣きだす児童もいる中で「先生方は勇気をもって、やらなきゃいけないって」。みんなが助かるように。重い教訓を後世につなぐ。

ビッグな先輩は、この上ない道しるべでもある。陸前高田では市民有志による「応援する会」の発足も近い。市長は小学生たちによく話すという。

「好きな野球ができる環境じゃなく、家庭の事情も大きく変わって、本当に大変な中でしっかり努力をして積み上げて、いまや日本中に知らない人はいないくらいのプロ野球選手に、陸前高田で生まれたみんなの先輩がなったんだよと。こうなりたいと思って努力すれば夢はかなうんだよ」

小学生たちは目を輝かせ、集中して聞く。20歳にもなれば、全ての我慢や努力が報われないことは誰もが悟る。市長は新成人たちには「チャレンジの成功確率を高めるには、どれだけ仲間を作れるかがカギです」と伝えた。友人たちに囲まれ、頭1つ大きい佐々木朗が見えた。「少年時代のまま、背が伸びた感じでしたね」。離れてから11年たってなお、故郷の式典にも顔を出してくれたことがうれしい。「多くの人に夢を描いてもらえるような活躍を願っています」。成人式の朝、陸前高田には薄い虹が懸かったという。【金子真仁】(この項おわり)