選手を見るプロのスカウトは、独特の視点で選手の動きをチェックする。22日の東都大学リーグの立正大-国学院大(神宮)戦の試合中、広島苑田スカウト統括部長の視線は1アウトごとにベンチへと移った。同統括部長は、金本(現阪神監督)、黒田(元広島)らを担当した名物スカウトである。

 苑田 凡退して、ベンチに帰った後の選手の姿を見てるんです。ホームランを打ったことよりも、三振したり、チャンスで凡退したりした時のベンチでの姿を見れば、その選手のことはよくわかります。

 今年から、神宮のベンチはグラウンド側に1・2メートル広がり、同スカウト統括部長が座るバックネット裏の席からは、選手の姿がよく見えるようになった。「選手のことがよく見えるから、いいですね」と言って、選手を見るポイントを明かした。

 苑田 私の中では、結果が悪い時に下を向いている選手はダメですね。声を出せとは言いませんが、ベンチの前に出て、「次、やり返すぞ」というように映る選手はいいです。金本、黒田もみんなそうでした。

 黒田の場合は負けん気の強さは、投球にも表れた。20年以上も前の黒田の姿を思い浮かべながら、笑顔で話した。

 苑田 黒田は、打たれた打者には打たれたボールで攻めるんです。内角の球を打たれたら、逆のボールで勝負するケースが多いんですが、黒田は違った。

 今秋のドラフトに向け、プロのスカウトは足しげく球場やグラウンドに視察に訪れる。それぞれが独自の視点で選手を評価付けし、ドラフト当日を迎える。【久保賢吾】