木浪聖也は分かっている。猛攻の8回1死一、三塁で回った5打席目。強い当たりの投手へのゴロを放った。併殺か。そう思ったら投手が二塁に投げない。「あれ? 何があったんかな?」。そう思いながら一塁を全力で駆け抜けたという。打球は投手・斎藤俊介のグラブに挟まり、抜けなくなっていた。珍プレーで自身2度目の猛打賞達成だ。
「普通ならゲッツーですよ。あそこでああなるのは運いいな~と思いましたね。強い打球を意識してるんでそれはよかったです」
今月6日から1軍に戻り、絶好調だ。これで4試合連続マルチ安打。特にこのDeNA3連戦は13打数7安打の打率5割3分8厘3打点と大暴れとなった。
そんな木浪のことをいつも気に掛けている人物がいる。この3連戦、出番がなかったDeNAの守護神・山崎康晃だ。3連戦前に少しだけ話した。気持ちのいい男でこのコラムにもたまに登場する。話題は亜大の後輩・木浪について。
7月下旬に不振から2軍落ちした木浪が今月6日に復帰するまでの間、DeNA戦はなかった。復帰してから木浪の活躍は書いた通り。だから、こんな話をしてみた。
「戻ってきてから調子いいよ」。すると山崎はこんな話をした。
山崎 知ってますよ。見てますもん。いいところで打ちますからね。すごくイメージがいい。やっぱり能力が高いなと思います。
お褒めの言葉なら耳に入れてもいいだろうと、それを3連戦前、本人に言うとこんな反応だった。
木浪 そうですか。ありがたい。見られているというのはやっぱりありがたいですよね。
ルーキーだが大学、社会人も経験して大人のムードを持っている。大人というのは見た目ではなく考え方がしっかりしているということだ。
常にファン、あるいはメディアの目にさらされる阪神の環境はシビアだ。そんな中、いつもできる限り、虎番記者に対応している。どんなメンタルでやっているのか。試合後、こんな話もした。
木浪 球場はいつもいっぱいで。いつどこを向いてもお客さんがいて。ありがたいなという気持ちでいつも野球をやってます。
そんな気持ちがあればラッキーも起こるだろう。見る側がいてこそのプロ。そこで活躍するのもプロだ。木浪を見ていて、そう思う。(敬称略)