「みんな佐藤やん」。そう思ったのは5回1死一塁で佐藤輝明が打席に入ったときだ。ロッテの投手は先発・佐藤奨真、捕手は途中で佐藤都志也に代わっており「佐藤バッテリー」だった。佐藤対決の結果は空振り三振である。

そんなどうでもいいことを思い浮かべるほど楽勝展開だった。先発はエースの青柳晃洋。対してロッテは育成出身、キャリアの浅い佐藤奨だ。そういうと“アレ”だが阪神打線はこういう投手のときは強い。

1回に3得点。3回にはロッテの中堅・高部瑛斗が佐藤輝の打球をそらすような三塁打もあって1点を追加し、序盤に4得点だ。救援陣に抑えられていたが9回に2点を上げてダメ押しに成功。青柳も期待通りの投球を続けていた。

そして9回だ。あとは自身最多の球数を投げた青柳の完封を見るだけ-と思っていた。しかし1死から中村奨吾が強い三ゴロ。途中出場の熊谷敬宥がダイブして捕ったまではよかった。だが一塁にバウンドする送球。これをこちらも途中から一塁に回っていた山本泰寛が捕れなかった。

これをきっかけに青柳が内野ゴロで1失点。その後、近本光司が送球エラーする場面もあった。結局、あと1死で完投を逃し、降板した青柳。「完投したかったんですけど。ムチャクチャ悔しいです」。自責点はゼロとはいえ、インタビューで本音が漏れた。

あまり試合に出ない熊谷や山本を責めることは厳しいかもしれない。しかし反対に言えば、そういうときに力を見せなければチャンスはもらえないはず。

「敬宥もああいうのをアウトにできるような選手になってこないとね」。指揮官・矢野燿大も指摘したがチーム自体、守備固めでなく主力を休ませるだけの交代では心もとないのだ。

交流戦は5試合で貯金1。5月のチーム成績も11勝11敗の5割となった。3月は6戦全敗だったし、4月も9勝14敗1分け。借金ばかりが目立つ今季だが、ようやく「貯金」「5割」というフレーズが出てきた。これは歓迎したい。

それだけに最後の“緩み”が気になる。細かいこと言うなとの声も聞こえてきそうだが、こういうのがよくないのだ。チーム全体で受け止めなければならないことだろう。3戦目も期待の左腕・伊藤将司だ。交流戦貯金2となるか5割かは大きく違う。あらためて締めていくときだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ロッテ対阪神 1回裏ロッテ2死、角中の右飛を好捕した佐藤輝(左)は先発青柳と笑顔でハイタッチする(撮影・上田博志)
ロッテ対阪神 1回裏ロッテ2死、角中の右飛を好捕した佐藤輝(左)は先発青柳と笑顔でハイタッチする(撮影・上田博志)