意気が上がらない。8日からは敵地・神宮球場に乗り込み、首位ヤクルトと久々の対戦である。そのためにも広島に連勝して6月20日以来の3位に浮上して挑みたいところだったが今季16度目の0点負けときた。

広島アンダーソンは好調だったが、それにしても、そんなに剛球かと思わされる内容だった。9三振はもちろん、ポンポンと打ち上げて飛球のヤマ。七夕の夜、木曜ナイターにもかかわらず3万8277人の大入りにした多くの虎党に申し訳ない敗戦だろう。

ここで思い出すのがあの話だ。日刊スポーツを愛読していただいている虎党なら、この連戦前に掲載した緒方孝市(日刊スポーツ評論家)の評論を覚えているのではないか。その時点でなぜ阪神が広島に勝てないのかという話をしたとき、焦点になったのが盗塁の少なさだ。少し、振り返る。

「なぜ阪神は広島戦で盗塁を仕掛けないのか。不思議で仕方がない」。走塁も効かせ、監督として広島に3連覇をもたらした緒方はそう言った。そこには理由がある。ここまで広島が1勝10敗1分けと苦手にしているヤクルト、広島戦は17盗塁をマーク。他球団相手のときはさほどでもないのに広島戦だけと言っていいほど走っているのだ。

この連戦前まで広島捕手陣の盗塁阻止率はリーグワーストの1割3厘だった。広島の弱点はそこなのだ。盗塁数がリーグ最多「63」の阪神にすれば“足攻”を仕掛けやすいはず。にもかかわらず阪神が広島戦で決めた盗塁は「4」で5球団でも最少だ。

そしてこの2試合、やはり阪神に盗塁はなかった。この日で言えば3回2死一塁で一走・中野拓夢という場面があったが島田海吏が初球を打ち上げ、中飛に倒れた。4回1死一塁で打者・大山悠輔が空振り三振し、一走・佐藤輝明が二塁で刺される“三振ゲッツー”はあったが、これはフルカウントからの自動スタートで二塁を狙った走塁という印象ではなかったと思う。

何度も書いたが指揮官・矢野燿大の言う「オレたちの野球」の原点は「超積極的野球」だろう。1年目の19年などは得点差に関係なく走ってきたはず。苦戦が続く今季だが、やはり、それがあって初めて攻撃にバリエーションが出ると思う。走らずに完敗したこの試合をきっかけに、あらためて、足で仕掛ける意識を強くしてヤクルト戦に臨んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 4回裏阪神1死一塁、大山が三振、さらに走っていた佐藤輝も二塁アウトとなる。捕手磯村(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 4回裏阪神1死一塁、大山が三振、さらに走っていた佐藤輝も二塁アウトとなる。捕手磯村(撮影・清水貴仁)