勝敗以上に“収穫”になったかもしれない。そんな気がしたプレーだ。試合の流れが変わったのはアレ。
少しでも野球が好きなら、その賛否は別にして、まず全員がそう思ったのではないか。6回表に広島が仕掛けた「本盗」である。
少し振り返っておきたい。1点リードの広島は2死三塁で打席に好調の末包昇大。その1ボールからの2球目に三走・中村奨成が本塁へスタートした。伊原陵人-坂本誠志郎のバッテリーはあわてず、本塁に送球。坂本は捕球したミットを下に置く感じで、楽々、タッチアウトとなった。
それにしても好調の4番打者のときに本盗とは。作戦というのは意外であればあるほど決まったときに驚くものだが、そう考えても衝撃は大きかった。満員の甲子園にもざわめきが広がったのである。
野球は流れのゲーム、この経緯を見て「これは…」と思った。はたして6回裏、代打・前川右京が自身の誕生日を安打で飾ったのをキッカケに中野拓夢の安打に相手ミスもあって追いつき、森下翔太の適時打で逆転に成功するのだ。
それにしても、あの本盗刺殺。プロとはいえ、あわてなかったバッテリーはよかったと思う。舞台裏を坂本誠志郎が説明する。
「なんか第1リードがでかいな、とは思ってた。ボクから三塁に投げようか(けん制)と思ってたぐらいのときに来たんで。無関心でなかったのは少しよかったかな。(阪神)ベンチが声を出してくれたんで、気づけた。あのケースで声が出るのはホームスチールしかないと思うので。早く反応できた」
基本とはいえ、ベンチとの連係で事なきを得た阪神は首位攻防戦を勝ち越しで終え、首位をキープしたのである。そこで思うのは今後の戦いだ。
あと2週間で交流戦に入る。普段は戦わないパ・リーグの球団がどんな仕掛けをしてくるかは分からない。特に最初に対戦する新庄剛志率いる日本ハムなど、こういう作戦は好きそうだ。敵地でこんな仕掛けを決められればキツい。
「今はどこのチームも、いつどこで動くか分からない状況とかあるんで。起こり得ることを準備してやっていきたい。(きょうは)びっくりしたけど、今後もうまくやっていけたら」。坂本もそう話した。実戦でいい経験ができたと思えば、この試合の持つ意味は計り知れない。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




