東奥義塾が前年優勝校の三沢商を9-7(延長10回)で破り、ベスト16進出を決めた。序盤壮絶な打ち合いとなり、6-6で延長戦に突入。10回表、7番神竜聖(じん・りゅうせい)一塁手の2点中前打などで3点を挙げた。2回から登板の2年生左腕、斉藤李玖がその裏の相手の反撃を1点に食い止め、激闘にピリオドを打った。

 東奥義塾ベンチ、全校応援の応援席から歓声がとどろいた。10回表1死満塁で神竜が中前打を放ち、ついに2点勝ち越しだ。さらに敵失で1点追加。だが三沢商もその裏、猛反撃。1死満塁から併殺崩れで1点を返された。斉藤が最後の打者を三振に切って取り、ゲームセット。ついに前年甲子園代表を破った。

 先発の太田塁(3年)が1回裏に4安打を打たれ、1-3と逆転を許した。東奥義塾にとっては誤算だった。だが2回表、打者9人6安打の猛攻で一挙5点を挙げた。長い時間を要したこの攻撃の間に、斉藤がブルペンで肩をつくった。工藤秀樹監督(38)は「あの回の5点、あの時間が大きかった」と振り返る。

 決勝打を放った神竜は「攻撃の前の円陣で、相手投手に『バスターで合わせよう』ということになった。初球から思いきりいった」という。タフな試合にも「ベンチで監督さん、部長先生も大きな声を出していた。最後まであきらめなかった」と胸を張った。工藤監督は「副主将でもある神がいい仕事をしてくれた」とねぎらった。

 大会で唯一の1回戦、7日の開幕試合で八戸工を破り、9日はシード校の五所川原工を1-0の接戦で破った。中1日の3連戦を勝ち抜き、ただ1校3勝目を挙げた。青森きっての古豪がこの日は前年優勝校を破り、台風の目になってきた。「昨秋、今春と勝てないチームだった。今大会を通して成長している。次も勝つというより、さらに成長できる試合にしたい」と工藤監督は無欲の姿勢だ。

 人工芝が整備された地元弘前のはるか夢球場で、全校応援の前で勝利。工藤監督は「応援が力になった。学校や関係者に感謝したい」。激闘を制した古豪がさらに前進する。【北村宏平】