大湊がセンバツ出場の青森山田を3-2で破り、4年ぶりのベスト8進出を果たした。0-2で迎えた8回表2死満塁から連続押し出しで同点。9回表、7番野崎敬秀右翼手(3年)の左前適時打で勝ち越した。8回から救援のエース小谷真勇(3年)が無安打無失点に抑えて勝利。「下北から甲子園」を旗印に、下北魂で快進撃の大湊がついに青森山田を倒した。

 球場内がどよめいた。小谷が最後の打者を二ゴロに打ち取り、ゲームセット。3回戦で伝統校青森北に7-3で逆転勝ちしたのに続いて、今度は昨秋東北大会優勝でセンバツ出場の青森山田に逆転勝ち。7回まで0-2の苦しい展開にも、くじけず、あきらめず戦って劣勢をはね返した。

 大湊は3人の投手の継投で、青森山田打線を2点に抑えた。先発の和田康志(2年)が2回を2安打1失点。2人目の高塚耕大(3年)が5回を4安打1失点。そして小谷が2回を無安打無失点。工藤公治監督(44)は「3人とも青森山田を恐れず、焦らず、それぞれの持ち味を出して投げてくれた」とたたえた。

 本州北端の下北半島は他地域と距離的に遠く、気候も厳しい。その中で、野球部の強化は容易ではなかった。大湊OBで78年から27年間監督を務め、05年に病死した富岡哲氏(享年49)が「敵は己」をモットーに選手を鍛えてきた。選手に自信を与えるため、合言葉にしたのが「下北から甲子園」だった。

 この下北魂を受け継いだのが富岡監督の教え子の工藤監督だ。主将・捕手として秋季青森県大会優勝。青森大では全日本大学選手権ベスト8に貢献した。また今大会、大湊が3回戦で破った青森北のほか、六ケ所とむつ工の監督も大湊OB。いずれも健闘し、富岡イズムと下北魂は生きている。

 大湊は青森山田に09年決勝で敗戦(3-4)など、工藤監督が05年就任以来勝ったことがなかった。ついに倒した。下北魂で、悲願の甲子園まで突き進む。【北村宏平】