旭川地区では、今夏限りで勇退を決めていた旭川南・小池啓之監督(65)が初戦を飾れなかった。

 「泣くな、男だろ。帰ってから泣け」。試合後、旭川南の小池監督が泣き崩れる選手に言葉をかけた。旭川龍谷、鵡川、旭川南でコーチ時代も含め通算4度の甲子園を経験した名将も今夏で退任。ラストゲームは留萌相手に2-9の7回コールドで敗れた。2回に1点先制した直後、バッテリー間のミスから逆転を許し、立て直せなかった。

 最後まで昭和の野球をつらぬいた。「弱小だった旭川南は意識改革からはじめた」。あいさつやグラウンド整備を徹底。02年の就任時、半数近くいた長髪を丸刈りに。筋トレよりも走り込み。練習も休みなく毎日行った。松田健汰主将(3年)ら現チームも冬場に計13~14万回振りんできた。「この子たちは(指導歴40年の中でも)本当に練習した」とねぎらった。

 旭川南で07年春甲子園に出場し、現在は紋別市職員として紋別を指導する元日本ハム浅沼寿紀氏(27)は「技術より精神的なことを学んだ。教えを受け継いでいきたい」と話した。指導理念は多くの教え子に引き継がれている。小池監督は自身の高校時代から振り返り「(選手だった市立尼崎1年の)第49回に出て今回が99回大会。50年もやれた。今後はゆうゆうとします」と柔和な表情をみせた。涙はなし。充実した面持ちでグラウンドを後にした。【浅水友輝】