早実・清宮幸太郎内野手(3年)の夏が、悔し涙で終わった。東海大菅生との決勝戦に「3番一塁」で出場。8回に右前打を放ったが、高校通算108号アーチは出ず、チームも敗れた。開会式の選手宣誓で「野球の神様に愛されるように」と誓ったが、野球の神様からは次なる舞台への試練を与えられたと受け取った。

 清宮は、第一声で「悔しいです」と言った。開会式の選手宣誓で「野球の神様に愛されるように」と誓った夏は、西東京大会の決勝で終わりを告げた。高校3年間で甲子園に2度出場し、高校通算最多タイ記録とされる107本塁打をマーク。伝説を刻んでもなお、野球の神様からのメッセージをくみ取った。

 清宮 準優勝で終わってしまったということは、『まだまだこれで終わりではない』『まだ次があるんだぞ』と神様に言ってもらっていると思って、やりたいと思います。

 勝利への執念を示し続けた。早実での最終打席、8回1死では右前打。外角低めの直球をコンパクトにはじき返した。「いつも通り、次につなごうと。悪くないヒット」。高校通算108本の期待は誰よりも感じたが、春から何度も繰り返し続けた勝利への1本に徹した。だが、同点の5回2死一塁では生沼の悪送球を止められず、2死から3失点。9回には自らの悪送球も絡み、試合を決定付ける2点を奪われるなど、ミスもあって苦しい展開から抜け出せなかった。

 試合終了後、天を見上げ、グッと涙をこらえた。野球、甲子園を愛する男は、勝負師の姿でグラウンドを去った。その背中に、後輩たちへの思いを込めた。「こんなところで終わるようなチームじゃ、後先に語り継がれないので、後輩たちにはこんなチームより全然強い、どこにも負けないチームを作ってもらいたいです」と話した。

 野球ファンに愛され、仲間にも、好敵手にも恵まれた。だから、報道陣から「どんな仲間だったか?」と聞かれ、我慢し続けた涙が頬を伝った。「…」。約30秒間の沈黙の後、「すみません」と心を落ち着け、仲間への思いを語った。

 清宮 みんな自分についてきてくれて、文句一つ言わず、やってくれた。準優勝でしたが、日本一のチームだと思います。

 ノーアーチに終わって、高校通算107本で早実での高校野球は終わった。清宮は思い出を聞かれ「思い出というか、毎日お弁当とか、洗濯してくれた親に感謝したいです」と頭を下げた。今後は第1次候補に選出された9月の第28回U18(18歳以下)ワールドカップの高校日本代表に向け、練習を再開する。そこでも主将候補。日の丸を背負うもう1つの夏が始まる。【久保賢吾】