南北海道大会では、北星学園大付が4-3のサヨナラ勝ちで札幌山の手を下し、初戦を突破した。

 またも土俵際でひっくり返した。北星学園大付は9回1死一、二塁から、4番佐々木の左翼線適時二塁打で追い付くと、延長10回1死二塁、“持ってる”8番山口が、決めた。1ボール2ストライクと追い込まれてからの4球目。外角高めの直球に反応した。「監督に言われた通り直球狙い。先っぽだったけど気持ちで振り抜いた」。打球は右中間にポトリ。二塁走者・本吉のサヨナラ生還を確認し、猛ダッシュで歓喜の輪に加わった。

 地区予選初戦の札幌藻岩戦は3点を追う9回に、一挙4点を奪いサヨナラ勝ち。チームを勢いづけた一戦で、決勝の生還を果たしたのが山口だった。「あのシーンを思い出した。みんな、もう1度、ドラマを起こそうという思いで一緒だった」。9回の中堅の守備では、左中間を襲った打球を好捕し、プロ注目右腕のエース杉村を助けた。「みんなでカバーしないとという思いで必死だった」。守備での集中力が、勝負どころでの一撃につながった。

 緊張が解き放たれた。打席の直前に相手投手が交代。投球練習の間、手元に違和感があった。「よく見たらいつも使っているバットじゃなかった」。3月の沖縄合宿から使う83センチの自分のバットを取りにベンチへ戻った。チームメートに間違えたことを伝えると「しっかりしろよ」と笑われた。「みんな笑顔だったので、あれでリラックスできた」。思わぬ失態が、初出場チームの力みを、一瞬で吹き飛ばした。

 就任10年目の沼山健吾監督(35)は「杉村だけじゃ勝てないよと言ってきたら、みんなで一つになって勝ってくれた。変わった。大したものです」とにこやかに笑った。初の南大会出場を決めた際は、男泣きだったが、この日は涙なし。地区から3戦で2度のサヨナラ勝ち。どんな逆境も恐れないフレッシュ軍団が、次は、今春全道準優勝の札幌日大に挑む。【永野高輔】