学法福島が決勝で福島成蹊に3-2でサヨナラ勝ちし、学法福島工時代の1966年(昭41)以来53年ぶり3度目の秋制覇を決めた。9回裏2死二塁、エース左腕・辻垣高良(たから。2年)が左中間にサヨナラ適時打。投げても2失点の好投で、豪雨の中での熱戦に笑顔で終止符を打った。

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エース辻垣が、バットで仲間を笑顔にさせた。終盤に雨脚が強まる中、1-2の9回裏。相手暴投で同点とした直後、外角高め直球を逆らわずに左中間へ。「内野ゴロでもエラーしてくれたらラッキーだと思い、次につなぐことだけ考えていました」。打球が落ちる前に「打った自分がビックリ」と目を丸くして、一塁側ベンチに向かってガッツポーズ。一塁ベースを回ると、雄たけびを上げながら歓喜の輪の中心となった。

投手でも8安打は打たれたが、10奪三振2失点完投。福島成蹊とタイブレークにもつれた県北支部大会1回戦から県大会決勝まで、全8試合を1人で投げきった。被適時打も、この日の6回に喫した1本のみ。9回には手が滑って2度の暴投もあったが、仲間の助言で雑巾をポケットに忍ばせてピンチを脱し、劇的勝利につなげた。最後も得意のスライダーで締めた。

試合前には吉兆もあった。藤森孝広監督(41)が午前5時半に空を見上げると、うろこ雲が三日月を取り囲む神秘的な光景を発見。同監督は写真撮影し、選手らにLINE送信。お互いが助け合える象徴ととらえた。同監督が仙台市の自宅から会場入りする際には、白石インター付近で大会4連覇していた聖光学院・横山博英部長(59)と偶然すれ違った。「これから決勝です」と電話すると、同部長からは「駆け引きせずに平常心で」と助言を受けた。勝者のメンタリティーも授かっていた。一気に水たまりができた9回の攻撃も恵みの豪雨だった。

8年ぶりの東北大会に向け、辻垣は「ワクワクしています。福島の歴史を変えられたので、次は仙台育英、青森山田などの甲子園常連校と戦ってみたい」。練習試合で仙台商や仙台城南には勝利経験もある。「自分は神戸市出身なので甲子園は地元。1戦1戦楽しんで勝って、出てみたい」。初の聖地切符をつかむためにも、持ち前の笑顔から得る力で強豪校を撃破する。【鎌田直秀】