全国高校野球選手権の代替となる都府県独自大会が28日に各地で行われ、群馬ではロシア人の母を持つ、プロ注目の桐生第一・蓼原慎仁投手(3年)が5回を1安打無失点と好投した。初回からエンジン全開で、自己最速タイの144キロマーク。プロ5球団のスカウトも視察し、力強い投球に熱い視線を注いだ。

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蓼原は初回からエンジン全開だった。自己最速タイの144キロを含め140キロ越えを連発。「初回は良かった」と好感触をつかんだ。2死から唯一の安打となる左翼線二塁打を許したが、打たれたのは変化球。直球は捉えられなかった。奪三振は2と少ないが、代わりに15アウトのうち11ものフライアウトを重ねた。1分あたり2300回転する、プロ並みにホップする直球で押し勝った。直球の割合はおよそ8割。「気合を入れて投げた」と力勝負を挑んだ。

好投したが、プロを目指す右腕は伸びしろをアピールした。「自分としては納得してない。クイックの時にストライクが入らなかったり、四球を出してしまった。まだまだ向上する余地があると思う」。プロ5球団が視察し、ソフトバンク福元淳史スカウト(36)は「ストレートをちゃんとコントロールできていた。上出来だと思う。素材としては申し分ない」と潜在能力の高さを評価した。

蓼原の生まれは東京だが、5歳まで母ナタリアさんの祖国ロシアの首都モスクワで暮らした。ミドルネームは、ロシア人初のプロ野球選手スタルヒンと同じ「ヴィクトル」。自分と同じく、外国の血を引くダルビッシュ(カブス)をあこがれの選手に挙げる。

桐生第一は8月10日から甲子園で行われる交流試合にも出場する。「甲子園に出るチームは優勝しなければならない」と蓼原。昨秋の県王者の誇りを胸に今夏も優勝を目指す。【小早川宗一郎】