<高校野球西東京大会:日野6-2杉並>◇18日◇3回戦◇市営立川球場

亡き友とともに戦ってきた。杉並のエース笠谷昂生投手(3年)のグラブは、小学校の時からの親友が使っていたもの。中学卒業の際、記念として何げなく譲り受けたが、その後投手だった友人は小児がんにおかされた。捕手だった笠谷は「復帰するまで自分が代わりに投げよう」と、高校では投手を志願。本人からは「先生には治ると言われた」と聞いていたが、高1の11月8日、帰らぬ人となった。

つらい時は空を見上げ、友人の顔を思い浮かべた。この日のピンチもそうだった。「こんなところで打たれてたまるか。あいつはずっと、病室で頑張っていたんだ」。マウンドはたった1人の孤独な場所。しかし笠谷には、いつも友がそばにいた。「投手の挑戦は良いことが1個もなくて、これまでずっとしんどかった。でも、彼のために腕を振り続けることが出来ました。それだけが誇りです」と涙を拭った。

野球は高校で完全燃焼するつもりだったが、少し揺らいでいる。「野球をどうするかは、これから考えます。ただ続けるとしたら、もう1回投手としてマウンドに立ちたい」。全力投球の3年間。天国の親友は、これからも見守ってくれているはずだ。【阿部泰斉】